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つんどCarrel本たち / Jan. 2002 〜Jun. 2002
  とりあえず、最近買った本をできるかぎりリスト化してご紹介。
  買った物全部ではないし、載せたから読んでいるとは限りません。
  目標は毎月末更新だ!!


お買い物 2002年6月ぶん
   すっかり忘れていたので、慌てて更新。誤字脱字のチェックなどしていないので、ミスはごめんなさい(って、別に今月に限った話ではないが)。

『RED』10 アッパーズKC (マンガ) <今月のオススメ>
2002 村枝賢一(著) 講談社 
 私が今、一番お気に入りのウェスタン。こちらが一巻
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』 (1)  始動編 カドカワコミックA (マンガ)
2002 安彦良和 (著), 矢立肇, 富野由悠季(原案) 大河原邦男(メカニック・デザイン) 角川書店
 オリジナル・シリーズの、安彦自身によるマンガ化。子ども時代のボクは、ガンダムからは大きな影響を受けたような気がするけど、決してよい読者ではなかった(モビルスーツの名前もさほど思い出せないし、Zガンダム以降はほとんど見ていない)ので、どこまでアニメに忠実かも判別不能なのだが、ややリアリティに配慮する形で書き込まれている印象がある。キャラクターは安彦っぽさが増しているかな?
『楽園夢幻綺譚ガディスランギ』 SPコミックス (マンガ)
2002 深谷陽(著) リイド社 
 『アキオ紀行 バリ』という、インドネシアを訪れたバックパッカーについてのマンガがデビュー作。非常にリアルなマンガで、著者や回りの人々の体験が反映されていると思われた。その後、ベトナム編(一巻二巻)や、このシリーズの登場人物を主人公にした『運び屋ケン』シリーズ(全)
など、第三世界を舞台にした作品が多くてお気に入りなのであるが、なんだかんだとインドネシア(のバリ)を舞台にしたストーリーが一番面白い(著者の愛着がうかがわれる)。というわけで本編の舞台は、一応架空の場所であるが、かなりインドネシアっぽい。
 ちなみに著者のサイト「アパカバール」
『お花畑で会いましょう』 BUNKA COMICS (マンガ)
2002 増田剛(著) ぶんか社 
 増田剛は「うらまっく」名義で成年コミック(っていう呼び方もどうよ? 要はエロマンガ)を数冊出版している作家。取り組んでいるテーマは悪くないのであるが、ストーリー展開がストレートすぎて、逆に含蓄にかけるきらいがある(やっぱり「死体」といったメタファーを巧く利用する岡崎京子は凄いのである)。あと、凝ってはいるのだが、簡単に崩壊しそうな装丁もちょっと…。
『カシミールから来た暗殺者』 角川文庫 (小説)
2002 ヴィクラム・A. チャンドラ(著) 伏見威蕃(訳) 角川書店 チ-6-1 Y762 
 小説 著者はインドのジャーナリスト。カシミール紛争が、その勃発から最近までの歴史として語られる。娯楽小説としての完成度は今ひとつだが、ふつうのカシミール人が反政府運動に巻き込まれていくあたりの描写など、リアリティはさすがである。また、なんといってもオサマ・ビン・ラディンが登場するのが話題を読んで、早々に日本語に訳された理由であろう。ただ、リアリティといってもあくまでインドのジャーナリストからの視点であり、カシミール問題に対する中央政府の失策やインド国軍の強圧的な態度は批判的に描きつつも、基本的にはカシミール独立という思想は浅薄であるという視点をとっており、またパキスタン政府やアフガンの原理主義勢力はカシミールを利用して勢力を伸ばそうとする悪役として捉えられている。
『プログラムはなぜ動くのか:  知っておきたいプログラミングの基礎知識』
2001 矢沢久雄(著) 日経BP出版センター 
 10年仕えるコンピューターの教科書、というコンセプトは重要。最近は情報教育と称するモノが、雨後の竹の子のように湧いて出ているが、結局なにを教えたら「大学教育」たれるのかという議論はなされないままなので、こういう本があるのは重要。ただ、うすっぺらなコンピューター教育へのカウンターを意識しすぎたのか、こんどはちょっと基本的なところから入りすぎている気もしないでもない。あと、お婆ちゃんやら女子高生やらが登場するコラムはアホ。
『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 <今月のオススメ>
2002 ジョセフ・E.スティグリッツ(著) 鈴木主税(訳) 徳間書店 
 世界銀行のエコノミストで、クリントンのブレーンも務めた非常に著名なノーベル賞経済学者(経済の学部生にとっては教科書で有名かも知れない)が、IMFの押し進めたグローバリゼーションを痛烈に批判した本。『WTO徹底批判!』のような、これまで多くご紹介した反グローバリゼーション本では、「経済の合理性」に依拠していたら全部ダメ、という立論になっている。いっぽうスティグリッツの議論はそうではなく(当たり前か?)、IMFが十分にセオリー通りやれなかったから事態はメチャメチャなのだということになる。
 しかし、スティグリッツによれば2001年から世界銀行も緊縮財政を基調とした構造調整プログラムが機能しないことを認め、ボリビアなどにはこれを適応していないという。未だに構造改革と称する「勝手に構造調整プログラム」を推進している我が国の政府関係者たちは、いったい何をしたいのだろうか? 本書には日本について特段の言及はないが、ぜひ政府関係者には謙虚に読んでいただきたい。
『バイオパイラシー: グローバル化による生命と文化の略奪』 <今月のオススメ>
 バンダナ・シバ(著) 松本丈二(訳) 緑風出版 
 『緑の革命とその暴力』の著者の、邦訳としては4冊目。"Biopiracy"の邦訳。
『稀少資源のポリティクス: タイ農村にみる開発と環境のはざま』
2002 佐藤仁(著) 東京大学出版会 
 まぁ、こういう調査を計画しているわけです、私も。でも、「村の中で誰が金持ちですか」的質問をするの、苦手なんだな。
 今後、こういった研究は重要になってくると思うわけで、読まれてよい本である。しかし、博論がベースというだけあって、最初に理論編が来てしまっている。これはちょっと読みにくい。初学者はあいだの章に出てくる事例の部分を幾つか読んでみて、そのあたりを念頭に置きながら最初から読み始めるのが良いであろう。
 ちなみにアマゾンの書名検索では、「稀少資源」を「希少資源」と入れると引っかからない。このあたり、もっと融通の利くデータベースにならないものか?
・『科学』 7月号 特集:エコツーリズムの展望
2002 岩波書店 
 ISBNがないので、購入は岩波のウェブサイトから。人類学者多数登場。
『科学技術と公共性』 公共哲学8
2002 佐々木毅, 金泰昌(編) 東京大学出版会 
 一度だけ覗かせてもらったのであるが、京都のホテルで名の知れた論者が集まって、2〜3日カンズメ状態で議論するという形式の、かなりハードな研究会の記録。しかも、多用な分野の「一流」をかなり節操無く集めている感じ。なかには、こういう機会でもなければ決して同席することのなさそうな人たちもいる(仲が悪いという意味じゃなくて、分野的に、という意味ね)。いろいろな意味で面白いシリーズ。
『エリート理論の形成と展開』
2002 居安正(著) 世界思想社 
 パレートの時代のイタリアに端を発し、右派左派に受け継がれてきたエリートと政治を巡る議論の総括。壮大な学説史だが、最後は日本の現状に対するグチで終わるところが苦笑。
『開発のミクロ経済学』
2001 プラナブ・バーダン, クリストファー・ウドリー(著) 福井清一, 不破信彦, 松下敬一郎(訳) 東洋経済新報社 
 すぐに読める本でもないので、レポートは追々。
『知の失敗と社会: 科学技術はなぜ社会にとって問題か』 <今月のオススメ>
2002 松本三和夫(著) 岩波書店 
 これは後ほどちゃんと書評を…。
『熊から王へ: カイエ・ソバージュ2』 講談社選書メチエ (239)
2002 中沢新一(著) 講談社
 『人類最古の哲学』の続き。
『緑の資本論』
2002 中沢新一(著) 集英社 
 最近すっかり中沢新一づいている…というほどでもないか。資本主義への抵抗としてのイスラムと地域通貨などを合わせて論じる本が出るかなぁ、と思っていたら中沢新一が書いた。例によって、確かなことと、思いつきや妄想に属することを腑分けせずに、ガンガンと模式化している。独特の言語センスに慣れさえすれば、けっこう有益なアイディアに詰まっている本である。但し、議論に感心する前の関連書籍を確認する方が賢明であろう。地域通貨については専門的な論文から『エンデの遺言: 根源からお金を問うこと』『エンデの警鐘: 地域通貨の希望と銀行の未来』のような入門書まで色々あるわけだが、イスラムと利子の禁止といったテーマには『イスラーム経済論』のような難物に取り組むしかないわけで…もうちょっと別の研究書が望まれよう。
 ちなみに議論はこんなところへも飛び火。
『インド民俗芸能誌』
2002 小西正捷(著) 法政大学出版局 
 まあ、タイトルのそのまんまである。芸能のスタイルや文化的、社会的背景まで扱われていて有用性が高い。
『ラブホテルの力: 現代日本のセクシュアリティ』 広済堂ライブラリー
2002 鈴木由加里(著) 広済堂出版 
 重要な先行研究として、『美人論』で有名な井上章一の、『愛の空間』が挙げられている。歴史的経緯を捉えるにはそちらのほうがベターかも。本書の特色は、ラヴホテルのテーマパーク化、というあたりを書き込んだうえで、ラブホテルという制度は、ヘテロセクシャリズムを制度的に強化すると告発している点であろう。ただ、議論があっさりとしすぎていて、その妥当性についてはちょっと判断保留。イメージ程度に留まらない、もうちょっと明確な対案が示されればよかったのだが。
『日本人の姿: JGSSにみる意識と行動』
2002 岩井紀子, 佐藤博樹(著) 大阪商業大学JGSS事務局, 東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センター(編集協力) 有斐閣 
 General Social Surveysとは、アメリカのNational Opinion Research Centerが1972年から実施しているものであり、本書が扱うJGSSは、GSSに範を取り、国際比較を視野に入れて実施されている大規模な社会調査である。そのわりには本書中には国際比較がほとんどないのはどういうことか? 当然、意外な結果も、予想される結果も含まれるのであるが、支持政党と自分の政治的傾向(保守か革新か)の関連はちょっと面白かった。
『邪教・立川流』 ちくま学芸文庫 <今月のオススメ>
2002 真鍋俊照(著) 筑摩書房  
 真言密教立川流の解説書。立川流とは、タイトルのとおり「邪教」とされた真言密教の一派で、例えば本尊には髑髏をつかい、これに赤白二諦、つまり行者が女性とセックスした上で採取された精液、愛液を八年にわたって塗り続けるのだという。立川流は、京極夏彦の『狂骨の夢』やマンガ『クラダルマ』にも登場するなど、それなりに有名であると思われるが、必ずしもちゃんとした研究書が手に入りやすいとは言えなかったようなところがあったので、喜ばしい。
『歓喜天とガネーシャ神』
2002 長谷川明(著) 青弓社 
 ガネーシャとは、象の頭をもっているインドの神様である。商売の神様として有名だが、性の神様でもある。これが仏教に入ると、、聖天(しょうてん)ないし歓喜天と呼ばれ、上記の立川流でも重要な役割を演じる仏として知られる。この本は、日本とインドのガネーシャ・イメージを比較したものである。眺めているだけでも楽しい。ただし、インドでは豊富なガネーシャ像が見られるのに対して、日本の聖天は多くの場合秘仏になっているので、仏像はほとんど見られない。代わりに、仏教画などから採られた絵が沢山使われているのだが、ちょっと残念な感じは拭えない。内容的には入門レベルながら、よくまとまっている。
『少子化をのりこえたデンマーク』 朝日選書690
2001 湯沢雍彦(著) 朝日新聞社 
 少子化対策としては、キャリア女性やシングル・マザーへのサポートを厚くし、教育費などの親の負担を切り下げ、婚姻の規範を社会的にも制度的にも緩やかにすることだ、ということが主張されている。…よく考えりゃ、当たり前すぎるほど当たり前である。しかし、その当たり前のことすらできない我が国政府へのメッセージとしては意味がある本…ってことでいいんだろうか???
『アイヌ: 海浜と水辺の民』
1995 大塚和義(著) 新宿書房 
 図版、工芸品の解説、年表などの付録があって、見ていて楽しい本。スタンスはかなり「伝統文化」重視。イタオマチ
(板綴り船)を再現する話(第7章)が、小笠原のカヌーとの関連で私にとって興味深い。っていうか、大変そうだなぁ、と…。
『悪魔の生物学: 日米英・秘密生物兵器計画の真実』
2001 エド・レジス(著) 山内一也(監修) 柴田京子(訳) 河出書房新社 
 第二次世界大戦直前から始まる各国(主に英米日)の生物兵器開発競争から始まる歴史ものルポルタージュ。装丁がちょっとトンデモ系な感じだが(笑)、内容はいたって真面目。日米を初めとした国々が、第二次世界大戦にさいして、どの程度まで生物兵器の研究を進めていたかに始まって、日本の731部隊の情報などが戦後の米軍にどのように利用されたかを詳述。情報公開された様々な記録にあたって、堅実な歴史を構築している感じではあるが、日本の人体実験や朝鮮戦争中の化学兵器使用について、結果としてはわりと穏当な結論に。問題が問題だけに、「本当にそれだけ?」という疑問は残るのであった。
『人口減少社会の設計: 幸福な未来への経済学』 中公新書 1646 <今月のオススメ>
2002 松谷明彦, 藤正巖(著) 中央公論新社 
 ちなみに新書にが『ウェルカム・人口減少社会』という類書などもあり、注目されているテーマであることがわかる。自分に経済政策の妥当性を云々する能力を認められないのは残念なところであるが、個人的な好みだけで述べることを許していただければ、本書が提示している、設備投資(のための内部保留)の抑制と人件費比率の引き上げ、といった経済政策のスタンスは好ましいものに思われる。でも、そのための方策として、売上高指向から利益率指向への転換や、国際分業の強化、という話しも上がっていて、なんかチグハグな感じも受けるんですが…。解説を求めてウェブ上を探しても、あまり反応がみあたらない。これからかな?
 …ちなみに最終章だけヨーロッパの町探訪にあてられていて、分かり易さにホッとしたり(笑
『社会保障入門: 何が変わったかこれからどうなるか』 講談社現代新書1571
2001 竹本善次(著) 講談社 
 というわけで、上記の本に加えてもう一冊挑戦。まだ読了せず。
『はじめてのOR: グローバリゼーション時代を勝ち抜く技法』 ブルーバックスB-1396
2002 斉藤芳正(著) 講談社 
 え〜と……そんだけ(笑。
『心療内科の時代』 ちくま新書346
2002 江花昭一(著) 筑摩書房 
 本の紹介を読むと、近年の歴史的展開を追っているように読めるが、どちらかっていうと、心療内科とは何か、という啓蒙っぽい内容。ところで、本書から理解したところでは、心療内科とは病因に心因性のものが含まれ、病状に身体症状が含まれるものを言う、ってことでいいのかな?
『パリ歴史探偵術』 講談社現代新書1610
2002 宮下志朗(著) 講談社 
 パリの街路の形成史。読むとベンヤミンが少し判るようになる…かもだ。
 ところで、馬の連続写真の話が面白そう。参考文献を見ると、松浦寿輝『表象と倒錯』が元ネタと推察(←殆ど春日本人のための読書メモ)
『プライバシー・クライシス』 文春新書23
1999 斎藤貴男(著) 文芸春秋 
 3年も前の本だが、目前に迫った住基ネット(納税者番号、あるいは国民背番号)制度であるが、もう何年も前から提示されていた問題点、疑問点がちっとも解決していない、ということが判る(笑。 もう、勘弁してくれ、という感じ。
『統合ヨーロッパの民族問題』 講談社現代新書1218
1994 羽場久み子(著) 講談社 
 このタイトルだと何となく英仏独の問題が扱われるのかなぁ、と思ってページをめくると、東欧の問題が中心になっていてよい感じ。本書の意図は、ハプスブルグ帝国からの独立を目指しつつ、ナショナリズムによる分断(やロシア帝国の介入)を警戒して、アメリカ合衆国をモデルに構想された「ドナウ連合」に、EUの起源を見るという、なかなか野心的な試みなのである。時事問題本としてみればちょっと古いけど、歴史に関する議論が中心の本だけに(現代を扱った章もあって、ビミョウだが)有用性はさほど失われていないと言えよう。しかし、政治学者というのは「発展を阻害する最大の要因である民族問題」みたいな単純化をしても誰からもつっこまれないんだろうか? ちょっとその辺りは困るね。
『マンダラは何を語っているか』 講談社現代新書1066
1991 真鍋俊照(著) 講談社 
 とりあえずマンダラって色々あるんですね、ってことで。
『知事: 地方から日本が変わる』 平凡社新書87 <今月のオススメ>
2001 橋本大二郎(著) 平凡社 
 橋本大二郎氏がわりと評価できると思うのは、思想的な部分も関係ないわけではないんですが(でも、私はこういう「第三の道」ラインはさほど好きではないので…)、それよりも行動原理を明確に言葉にできて、その範囲でいろいろ「やってみる」ことができる人に見えるからだ。前者は、日本では「タテマエ」とかきれい事と言われるわけだが、政治をするうえでタテマエとかきれい事をきちんとこなせるのは大切なことだ。そういう意味で、こういう本を書いて、インターネットのサイトをつくった理由や、日々の行動、導入したシステムや政策の意義なんかを論じられるというのは、基本であるという社会にしたいものだ。あと、職員インターンはいいアイディアだ。
 最近は国政より地方自治、特に知事あたりが政治の停滞に対する風穴になるんじゃないかという感覚があるようで、『知事が日本を変える』なんて本もでていたりするようだ。
『大学を問う: 荒廃する現場からの報告』
1992 産経新聞社会部(編集) 新潮社 
 古本屋で発見。というわけで(どういうわけだ?)10年前の大学論である。このころから大学への批判はさほど変わっていないわけで、制度的な不審はあまり変わらないと言うのが判る。その上で、とかくお金のことが論議されるようになったのが、当たり前のようだが最近の特徴である。…要するにどんどんドツボにはまっていっていると言うことだろう。古本屋で見つけたので購入した後から、文庫版があることに気がついた。不覚(ただし、若干内容が違う)。
"The Third Way and Its Critics"
2000 Anthony Giddens(著) Polity Press 
 ブルデュー亡き後、社会学最大のビッグ・ネームであるギデンズであるが、同時に英ブレア首相のブレーンとしても知られている。ブレアの政策に多大な影響を与えているとされる著作が『第三の道』原書 )であるが、その続編的著作。批判などに答えている。
 ところで、装丁が洋学術書ペーパーバックにありがちな、とたんに反り返りそうなペラ紙でない。やっぱ売れる本は違うな、と思ったり。
"Anthropological Locations : Boundaries and Grounds of a Field Science"
1997 Akhil Gupta, James Ferguson(編) University of California Press 
 今更ですが、買ってみた。実はXXX研究の再準備に取りかかるところだ…というのはナイショ。
"Unfinished Tales" Reissue 版
1998 J.R.R. Tolkien (著) HarperCollins 
 以下、映画『指輪物語』を見た後、つい買い込んでしまった関連書籍リスト。『指輪』の舞台は詳細な歴史が設定されている「中つ国(Middle Earth)」という世界である。この中つ国を舞台にしたファンタジーとしては、著者トールキンが生きていた時代に発売されたのは『ホビットの冒険』と『指輪』だけである。しかし、トールキンが出版を計画していた膨大な草稿が存在しており、それらのうち最もまとまったものが最初に『シルマリルの物語』として発表された。それでも膨大に余った草稿のうち、比較的まとまったものは本書"Unfinished Tales"として出版され、その後もボツになったネタその他含めて全12巻の"The History of Middle-earth"として発刊されている。
"Atlas of Middle-Earth"
2001 Karen Wynn Fonstad (著) Houghton Mifflin Company 
 言わずと知れた『指輪物語』の解説書であるが、地理学者である著者が、トールキンの残した資料から詳細な歴史地図を再現。ある意味で壮大なるムダ。外部性を極限まで無視したテクスト自体との戯れがあるとしたら、かなり良い線いってるんじゃないですかね、バルト先生? 邦訳『「中つ国」歴史地図 』もある。これは映画前後に出たトールキン関連本の中では最も良心的で価値ある本であると言えよう(そもそも評論社的には「たまたま」映画の時期に重なっただけというウワサも聞いたり)。
"J.R.R. Tolkien: Artist and Illustrator"
2000 Wayne G. Hammond, Christina Scull (著) Houghton Mifflin Company 
 こちらは、トールキン自身が『指輪物語』を含む自作について残したイラストや習作を集めて、解説を付けたもの。タイトルから想像されるよりは文字が多いので英語に自信のない方は邦訳『トールキンによる「指輪物語」の図像世界』をどうぞ(但し_私は見ていないので判らないが_ちょっと小さいので絵の迫力もそれなりになってしまっているとも聞く)。
"The Art of the Fellowship of the Ring"
2002 Gary Russell(著) Houghton Mifflin Company 
 Amazon.co.jpで30パーセント引きだったので、思わず買ってしまいました。映画の設定資料集だと思ってください。そうか、ビルボはこういう家で寝起きしているんだ、とか想像して楽しめる人にはお勧め。まぁ、オタク用ってことですな。日本語版は無しだけど、文字がほとんど無いので英語版を買っても誰でも楽しめる。

お買い物 2002年5月ぶん
  ちょっと忙しかったので、大幅にはしょってご紹介。残りは別ページに解説抜きでリスト化。

『センチメントの季節』 8
2002 榎本ナリコ(著) 小学館 
 マンガ 援助交際を描いて話題になったマンガです。一巻の出版が1998年(連載開始は1997年中)。4年の時をへて完結ということになるわけですが、連載が始まった頃から考えると、状況も大幅に変わっているわけで、時代の流れの早さに愕然とさせられます。ちなみに前半4巻は短編集。後半4巻は一巻で一つのストーリーが完結する方式になっているわけですが、どちらかというと、ボクには後半のほうが面白いです。
『EDEN: It's an Endless World』 7 アフタヌーンKC
 遠藤浩輝(著) 講談社 
 マンガ 舞台は、謎のウィルスによって滅亡寸前までいった地球人類が復興過程にある近未来の南米。一巻から二巻ぐらいまでは、フツーの(正直言うと百凡の)近未来SFマンガを予想していたのであるが、あれよあれよというまに面白い展開に…。とりあえず騙されたと思って三巻まで読んでみるとよいでしょう。キャラクターや勢力の名前は善悪二元論で有名なグノーシス主義からの引用だが、物語は誰も正義の見方ではない、なかなか含蓄のあるストーリー。
『WTO徹底批判!』 <今月のオススメ>
2002 スーザン・ジョージ(著) 杉村昌昭(訳) 作品社 
 実に平明なグローバリゼーション問題の解説。なぜジョゼ・ボヴェがマクドナルド襲撃に踏み切ったかなども解説されている。とりあえず読みませう。著者はATTACの副代表で、『債務ブーメラン』などの著作でも有名。
『インパクション』130 特集:日常に忍びよる有事体制
2002 インパクト出版会 (編) インパクト出版会 
 というわけで、上記の著者、スーザン・ジョージのインタビューなどが読めます。
『"標準"の哲学: スタンダード・テクノロジーの三〇〇年』 講談社選書メチエ235
2002 橋本毅彦(著) 講談社
 タイトルそのまんまで、フランス革命前後から始まる、工業技術の標準化の歴史が語られます。勿論、戦争とか時間の管理とかが関わってくるわけです。このあたりのテーマのわかりやすい(廉価な)本はありそうで見あたらなかったので、出版は喜ばしい。
『中央省庁の政策形成過程: 日本官僚制の解剖』 計画行政叢書9
1999 城山英明, 鈴木寛, 細野助博(著) 中央大学出版部
 通産省、国土庁、建設省、厚生省、総務庁・行革審議機関、大蔵省、外務省などの政策決定プロセスが扱われている。まあ、コメントすると色々ありますが、まず敵を知ることから始めよう、ということで。
『生物資源アクセス: バイオインダストリーとアジア』 <今月のオススメ>
2002 バイオインダストリー協会 (その他), 渡辺 幹彦 (編集), 二村 聡 (編集) 東洋経済新報社 
 「生物多様性条約」の重要性を指摘しつつ、それが設定する状況の中で、あるいは状況を利用して商売するさいの要点の解説書。運動家の議論(例えば『バイオパイラシー』)や生物学サイドの議論(例えば『生物多様性の意味』)と比較して読むと面白い。
『バイオエコノミー: 新しい経済法則がすべてのビジネスを変える』
2002 リチャード・W. オリバー(著) 酒井泰介(訳) ダイヤモンド社 
 なんか色々マニフェストしたいみたいですが、私にはリアリティがあまり感じられなかったので面白くなかった。正直言って、これが本になるなら楽な世界だなぁ、という印象。同じようなテーマの本としては上記『生物資源アクセス: バイオインダストリーとアジア』がよりオススメ。
『TLOとライセンス・アソシエイト: 新産業創生のキーマンたち』 <今月のオススメ>
2002 渡部俊也, 隅蔵康一(著) ビーケイシー 
 大学での科学研究と産業をつなぐシステムであるTLO(技術移転機関)のアメリカにおける創世と、日本への受容について。インダストリー・プルとテクノロジー・プッシュ、千発明主義と先申請主義など、議論を要する概念にも触れているが、全般的に踏み込みは甘く、紹介ないしドキュメンタリーに留まっている。とりあえずサラリーマン層などに読んでもらって、詳しい議論を望む人はさらに著者らの論文を、というところだろう。逆に言えば、これからの大学の機能を議論する際には、これくらいは読んでおくべき。
『プリオン病の謎に迫る』 NHKブックス939 <今月のオススメ>
2002 山内一也(著) 日本放送出版協会 
 幅広い文献、原論文に当たっており、非常に良く書けている。必読。
 まず第一に、狂牛病の重要性というのがある。これは要するに専門家がまったく予想もしなかった経路から、殆ど想像の範囲外にある未知の病原体が人間の生活圏内に進入してきた、という話であり、それ以前と以後では社会にとって安全性の意味が根本的に変わってしまったといえる(予防原則に関する議論はそのあたりを先取りしていたとも言える)。その意味で、プリオン病を知らずして科学論が語れるか、という状態にある。  第二に、これはエピソードに属する話しなのだが、オーストラリアのクールー病の話が興味深い。人類学者はマーヴィン・ハリスらごく一部を除いて人類のカニバリズムは栄養価の問題ではなく、呪術的な意義の問題であると説く。ところが、本書が参照している研究の幾つかは、栄養のためのカニバリズムの可能性を示唆する。ここはチェックしてまたレポートしたい。
『ポストモダニティの起源』 こぶしフォーラム5  <今月のオススメ>
2002 ペリー・アンダーソン(著) 角田史幸(訳) こぶし書房 
 ペリー・アンダーソン本邦初登場というだけでもある程度重要? 本書はジェイムソンの"Cultural Turn : Selected Writings on the Postmodern 1983-1998"の書評として企画されたものとのことである。ジェイムソンにはすでに『時間の種子』など多数の翻訳があるが、よりによって未だ翻訳のない本の批評がさきに訳出されるというのもどんなもんか? しかしながら、基本的には独立した評論として読めるので、(たぶん)"Cultural Turn"を読んでいなくても面白い。
 ところで、思想書の翻訳には大体、巻末に要約がついていたりすることが多いが、本書もご多分に漏れずで、しかも妙によくまとめられていたりする。読んでしまうと本編を読む気力が萎えるような気もするので、解説は後から読むのが吉。
『実践的市民主権論: 市民の視点とオンブズマン活動』
1998 辻公雄(著) 花伝社
 "Civil Society"議論というのは、ひとつ重要な課題である。個人的には「市民運動」は大いに応援したいが、それが必ずしも(潮流全体としてみたとき)好ましいものであるとは言えない、ということはすでに「ポストモダン時代のパブリック概念」として論じたわけだが、そのあたりの資料をちまちま集めようと言うことで買った本。現場の運動に携わる人の声などが多く掲載されており、興味深い。そういう意味では、著者(とクレジットされているが、厳密には編著)は市民オンブズマンなどに主に関わる弁護士で、取り扱われている内容もオンブズマン的活動や側面がやや多い。

お買い物 2002年4月ぶん
   すでに当初の予定より一ヶ月おくれの更新になりつつあるような気がしますが…。

『科学論の現在』 <今月のオススメ>
2002 金森修, 中島秀人(編) 勁草書房 
 科学論の教科書(大学院レベル)です。しかし、どうして『科学技術時代への処方箋』から一貫してずっと、毎回こんなに装丁が地味かな? そのうち合評会も企画したいので、我をと思うかたはメールでご一報を。
『飢饉・疫病・植民地統治: 開発の中の英領インド』 <今月のオススメ>
2002 脇村孝平(著) 名古屋大学出版会 
 飢饉の原因については色々な議論があることは、アマルティア・センの著作などから良く知られている事だと思われるが、その問題について系統的な検証を加えたもの。
『神話としての創世記』 ちくま学芸文庫
2002 エドマンド・リーチ (著) 江河徹(訳) 筑摩書房 
 どういうわけかリーチは次々ちくま学芸文庫に入りますね。嬉しいんだけど、他の本ももうすこしバランスよく発行してくれないかな。個人的にはターンブルとマリノフスキーを希望。
『環境学の技法』
2002 石弘之(編) 東京大学出版会 
 教科書です。
『自然農法 わら一本の革命』
1983 福岡正信(著) 春秋社 
 マンガ『Seed』シリーズで主人公が使う(って書くと秘密兵器みたいだが(笑))シードボールというのがあります(ちなみに3巻に解説マンガアリ)。それの元ネタを提供したとおぼしき方。シヴァのツアーで何度も言及されていたので、国際的に著名なようです。ちなみにワタクシ、シードボールと福岡氏をサイバラ『鳥頭紀行ぜんぶ』で知りました。研究者として、大丈夫なんだろうか、自分?
『無3 自然農法』
1985 福岡正信(著) 春秋社
 で、上記の本の実践編。意外と(というのも失礼だが)リアルな感じを受けました。
『素敵な宇宙船地球号』2
2001 テレビ朝日, 全国朝日放送(編) テレビ朝日事業局出版部
 テレビ番組素敵な宇宙船地球号のまとめ。こんな薄い本でも色々知らないことが出てきて便利。一巻はこちら
『エンデの警鐘: 地域通貨の希望と銀行の未来』
2002 坂本龍一, 河邑厚徳(編) 日本放送出版協会 
 無論、『エンデの遺言: 根源からお金を問うこと』の続編で、日本や海外で行われている多くの地域通貨についてのレポートを含む。あと、今回の目玉は坂本龍一の参加であろう。どんどん話が広がっていくなぁ(どうなることやら?)。
『現代思想 5月号』(vol.30-6) 特集:公共圏の発見
2002 青土社  
 最近面白くなかったのですが、今月はちょっと力が入っている(?)。
『徹底討論WTO: ポストシアトル、市民の課題』 2001ブックレット〈8〉
2001 市民フォーラム2001(編) 市民フォーラム2001事務局
 『WTOが世界を変える?』のつづき。市民フォーラム2001は(その名の通り?)2001年をもって解散しているので(書籍窓口という形で機能しているようですが)、もしかしたら早めに買っておく必要があるかも。
・『参加型アセスの手引き』
 環境省総合環境政策局  
 購入は政府刊行物サービスステーションから。(しかし、この内容でこの値段は高いと思うのはボクだけですかね? こういう行政の発行物は無料に近い額にできないもんか?)
『環境先進国・江戸』 PHP新書198
2002 鬼頭宏(著) PHP研究所
 題名から見当がつくとおり、江戸はエコロジカルだったんだよ、という本。生類哀れみの令の再評価など、最近ちらほら話題になることの集大成。新書一冊で議論の当否を判断するのはちょっと乱暴だが、読んでおいて損はなかろう。特に本書は、江戸大絶賛というわけではなく、ちょっと引いた視点からマクロに自体を眺めているので、論点を俯瞰するには良書。個人的には第五章にある熊沢蕃山、引用にある一文だけで判断するのもなんだが、凄いと思った。
『風俗営業取締り』 講談社選書メチエ238
2002 永井良和(著) 講談社
 
『データブック NHK日本人の性行動・性意識』 <今月のオススメ>
2002 NHK「日本人の性」プロジェクト (編) 日本放送出版協会 
 天下のNHKの名前で性行動について調査。標本は無作為抽出で2,100。これはそれだけで価値がある。まぁ、項目はツッコミどころも残るが、それでも色々なことが見えてくる。最大のツッコミどころは解説するのが上野千鶴子&宮台真司であるってところだが、実は以外とマジメにやっている。まあ、買いでしょう。
『クィア・サイエンス: 同性愛をめぐる科学言説の変遷』
2002 サイモン・ルベイ(著) 伏見憲明(監修) 玉野真路, 岡田太郎(訳) 勁草書房
 ルベイは、異性愛者と同性愛者では脳の視床下部といわれる部分に差があるという研究を発表した科学者で、自分自身もゲイであるという立場表明をしている。その彼が、自分の研究の社会的インパクトに驚いて(?)その社会的意義を考察。極めてまじめな人だというのはよく判る。社会科学者からすれば批判点は多いが、目配りの広さはあるし、議論としても、資料としての価値も高いだろう。
『性と出会う: 人類学者の見る、聞く、語る』
1996 松園万亀雄(編著) 須藤健一, 菅原和孝, 栗田博之, 棚橋訓, 山極寿一(著) 講談社 
 ちょっと古い本ですが、古本屋で見つけて買ってみました。面白いことは間違いがない。
『夫と妻のための新・専業主婦論争』 中公新書ラクレ40
2002 中公新書ラクレ編集部(編) 中央公論新社 
 アグネス・チャンが子どもも職場に連れて行くと宣言したことに端を発する論争は一般に第三次主婦論争と呼ばれる。とすれば、今回のものが第4次になるわけだが、なにぶんテーマがこすっからい上に、参戦している人が妙に軽量級なので、全体につまらない…という事実を確認させられる本。ほぼ全員が全員、それが変わることによって誰かの人生が変わるのか、というような内容にこだわっているようにしか見えない。
『現場主義の知的生産法』 ちくま新書340
2002 関満博(著) 筑摩書房
 ノウハウ本ばかりというのも辛いご時世ですが、『独学の技術』も役に立ちそうだと思ってしまったり。
『オーラル・ヒストリー: 現代史のための口述記録』 中公新書1636
2002 御厨貴(著) 中央公論新社
 これも上記と同様、教科書にどうぞ。
『多文化主義・多言語主義の現在: カナダ・オーストラリア・そして日本』
1997 西川長夫, 渡辺公三, ガバン・マコーマック(編著) 木村和男, 加藤普章, 石川一雄, スチュアート・ヘンリ, トーマス・R.バージャー(著) 関根雅美, 杉原充志, 細川弘明, 鈴木清史, 佐藤真知子, 杉本良夫, ジョージ・ババリナス 人文書院
 これも教科書ですね。編著者の一人、マコーマック氏は最近、小笠原について調べ初めておられるようであるが、ここではでてこない。
『検証・なぜ日本の科学者は報われないのか』 <今月のオススメ>
2001 サミュエル・コールマン(著) 岩舘葉子(訳) 文一総合出版
 コールマンは人類学者であるが、これを人類学的エスノグラフィーと呼ぶには、いささか政治的になりすぎているような気がする。とはいっても、日本の自然科学系研究所に対する総括的な研究はこれまでほとんど無く("Beamtimes and Lifetimes"があげられるぐらいか)、意義は極めて大きい。しかし、どうでもいいけど巻末の文献表が当たり前だがアルファベット表記なのにも関わらず、文中の引用文献表示はカタカナなのは何を考えているのか理解しがたい。
『大学は生まれ変われるか: 国際化する大学評価のなかで』 中公新書1631 <今月のオススメ>
2002 喜多村和之(著) 中央公論新社
 最近は星の数ほど大学論が出版されているが、なかでも分かり易さと問題設定の適切さにおいて最も推奨できる本であろう。
『激震! 国立大学: 独立行政法人化のゆくえ』
1999 岩崎稔, 小沢弘明(編) 未来社
 昨年(シンポジウムのおり)立ち読みしただけだったので、改めて読む。読む価値があるのはマサオ・ミヨシのぐらいで、あとはまぁ、あまり面白くないというのが正直な感想。正論ではあるのだが、10年前に言え、という気がしなくもない。
『「勝ち組」大学ランキング: どうなる東大一人勝ち』 中公新書ラクレ47
2002 中井浩一(著) 中央公論新社
 前振りは面白かったのであるが、結論はそこかい、ってことで…。『知の技法』をめぐる顛末の部分がちょっと面白いといえば面白い。
『大学とアメリカ社会: 日本人の視点から』 朝日選書492 <今月のオススメ>
1994 中山茂(著) 朝日新聞社 
 これは良い。古い本だが、逆に最近の論調に足をすくわれていない。初めのうちは欧州の大学から見れば幼稚園だと思われていたアメリカの大学が世界で独自の地位を確立するまでの歴史を、筆者独特のユーモアある文体で語る。面白いし、ためになる。アメリカの大学も紆余曲折なんだなぁ、と思うと、だいぶ色々なものが見えてくる。要は目先の改革じゃなく、理念をキッチリたてることです(と書くと当たり前だが)。
『神は日本を憎んでる』 海外シリーズ
2001 ダグラス・クープランド(著) マイク・ホワットソン(絵) 江口研一(訳) 角川書店
 結局買っちまったい。日本の世相を反映するという意味では、個人的にはよくかけていると思うんだけど、どうかな?
『インドへの道』 ちくま文庫
1994 エドワード・モーガン・フォースター(著) 瀬尾裕(訳) 筑摩書房 
 デビッド・リーンの映画で有名だが、『修辞の政治学』で帝国と植民地の関係を考察するネタに使われている。WTO問題を扱うときに、これをつかって気の利いたことを言えまいか、と思って読み直し。
『岡崎京子 総特集』 KAWADE夢ムック
2002  河出書房新社 
 岡崎京子の特集はスイッチの時も買ってしまったし、結局好きなんです、はい。
"Available Light: Anthropological Reflections on Philosophical Topics."
2001 Clifford Geertz(著) Princeton University Press
 Available Lightは自然光の意味。極めて有名だが、これまで単行本に収録されてこなかった "Anti Anti-Relativism" を収録。発売は昨年の10月。ハードカバー版は2000年3月発売なのでまったくの偶然なのだが、絶妙のタイミングと言えなくもない。
"Pathways of Power: Building an Anthropology of the Modern World"
2001 Eric R. Wolf, Sydel Silverman, Aram Yengoyan(著) University of California Press 
 一方こちらはミシガン学派の重鎮、エリック・ウルフの本。
"Joe Hill" Reprint版
1984 Gibbs M. Smith (著) Peregrine Smith Books
 Wobbliesと呼ばれるアメリカの季節労働者たちを歌とミニコミで組織した希代の運動家、ジョー・ヒルの伝記。最近市民運動などに関わることが多くなったので、ちょっと勉強したくなった。っていうかですね、季節労働者という、スト破りになんのコントロールもできない集団を運動として組織するってのは、今から考えても凄いことです。
『沈黙の春』 新潮文庫カ-4-1
1974 レイチェル・カーソン(著) 青樹簗一(訳) 新潮社 
 ちょっと確認のために再読。カーソンがDDTの変わりに推奨しているのはBT毒素のような微生物由来の害虫駆除のほか、雄不妊化、ホルモンやにおいや音などの利用、天敵の導入などである。うーむ、現代の視点から見るとツッコミどころ満載ではある。
『新・分子生物学入門: ここまでわかった遺伝子のはたらき』 ブルーバックスB-1363
2002 丸山工作(著) 講談社 
 …ブルーバックスの紹介ってのは、何を書けばいいんだ?(笑)。
『ホルモンのしくみ』 入門ビジュアルサイエンス
1998 大石正道(著) 日本実業出版社 
 これも特にコメントしようがないかも。
『森林の生態: 新・生態学への招待』
1999 菊沢喜八郎(著) 共立出版 
 もちろん教科書。著者は高校生以上を対象にしたと述べているが、それは勿論怪しい。
『DNAに魂はあるか: 驚異の仮説』
1995 フランシス・クリック(著) 中原英臣, 佐川峻(訳) 講談社
 原書は"Astonishing Hypothesis "。日本語はサブタイトルになってしまっている。しかも、内容的にはさほど「DNA」の話ではない(生物学的決定論の話ではあるが)。こういう半分詐欺みたいな商法はちょっといただけない。
『シェイクスピアを学ぶ人のために』
2000 今西雅章, 尾崎寄春, 斎藤衛(編) 世界思想社
 ちょっと小ネタ的に買った本だが、駄洒落について考察し直した章がアカデミックに面白い、と言えないこともない。しかし、文学研究の人ってのは、大昔の人の話をするのに「アイディンティティ」という言葉を使うことに違和感を感じないんだろうか、と思ったり…。
『アフリカは本当に貧しいのか: 西アフリカで考えたこと』 朝日選書482
1993 勝俣誠(著) 朝日新聞社
 単なるエッセイですが、「私たちは『伝統』を求め、アフリカは『近代』を求める」とか「アフリカで知識人であること」とか、深いです。あと、マリの作家(?)から14世紀にマリ帝国のアブバカリ2世が帝位を捨てて航海に熱中、アメリカ大陸に到達していたという「史実」を語るエピソードが興味を引く。そういえば先日、鄭和が世界一周に成功していたらしいという話も伝えられているし(だとすれば15世紀)、小生の卒論も廃棄処分ですな。
『目からウロコの民俗学: あのしきたりには、こんな意味があったのか!?』
2002 橋本裕之(著) PHPエディターズ・グループ
 ちょっと小ネタ的に面白いのでつい買ってしまう。
『スモール・イズ・ビューティフル再論』 講談社学術文庫1425
2000 E.F. シューマッハー(著) 酒井懋(訳) 講談社 
 英Resurgence誌に掲載された論文を収録。序文は同誌編集長のサティッシュ・クマール氏(このあたりについてはインドに関する拙稿も参照のこと)。
 ごくまっとうな思想(中間技術など)が飛んでる語彙(宇宙からのメッセージなど)とカップリングしないと流通しなかった時代、というのが真の問題だと気がついた。
『住民投票』
1997 今井一(編著) 日経大阪PR
 著者は『住民投票』(岩波新書)『大事なことは国民投票で決めよう!』といった関連著作の多いジャーナリスト。本書は巻町(原発)、御嵩町(産廃処分場)、名護市(米軍ヘリポート)をめぐる住民投票の記事と、関連シンポジウムの記録。それにアメリカとスイスの事例紹介からなる。また、橋本大二郎(高知県知事)とアーネスト・カレンバック(環境問題で知られる作家)の序文がついている。もう一つ面白いのは、これまで請求(そして殆どが否決)された住民投票のリストが巻末付録で付いていること。97年の段階で計74件。これは結構な数である。
 あと、この本でAmericans Talk Issues Foundationを知りました。この団体は、コンセンサス会議問題で日本のSTSグループが主張しているのと同じようなことを考えているようです。
『EUを創った男: ドロール時代十年の秘録』 NHKブックス738
1995 チャールズ・グラント(著) 伴野文夫(訳) 日本放送出版協会
 最近、NHKブックスは文理どちらのテーマに置いても、とても役に立つ本が多いんじゃないかと思い始めた。
 本書はEU委員長だったドロールの伝記から、EU成立に関わる部分だけを抄訳、一部書き下ろしを加えたもの。媒体を考えると適切な判断といえようか。中道左派のドロールが、自由主義的傾向の強いイギリスをはじめとした諸国と、社会主義者ミッテランの支配下にあるフランス政界との板挟みになる状況が今読んでも面白い。いや、そのフランスで反EU感情が高まっている今こそ読むべし。しかし、ヨーロッパ人もけっこうその時のノリと感情とで政治をしているように見える(但し理念と基本的な指針は堅持)。
『21世紀の10大技術: 社会と生活はどう変わるか』 NHKブックス875
1999 森谷正規(著) 日本放送出版協会 
 ちなみに「10大技術」とは燃料電池自動車、コジェネレーション、大震度地下利用、高度道路交通システム(ITS)、携帯情報機器、壁掛けテレビ、家庭情報システム、クローン、遺伝子診断・遺伝子治療、地震予知、である。21世紀といってもわりと短期的。バラ色の未来を約束する夢の技術というわけでもない。例えば大震度地下利用も、バブル期のようにジオフロント計画のようなものをぶちあげるわけでもない。著者の堅実さと言えばそれまでだが、ある意味このあたりが逆説的に21世紀的なのではないかと思う次第。
『市民からの環境アセスメント: 参加と実践のみち』 NHKブックス815
1997 島津康男(著) 日本放送出版協会 
 著者の説明では『新版 環境アセスメント』の「後を継ぐもの」だそうであるが、法律の改変などの現状を反映させるとともに、より実践的な側面を理解させる目的があろう。市民講座の講義をまとめたとあって、実例や図表、ちょっとしたエクササイズが盛り込まれている。良書。
"Reefer Madness : The History of Marijuana in America"
1998 Larry Sloman, Larry Ratso Sloman(著) St. Martin's Press
 先日日記で、マリファナ問題について言及したので、ついでだからちょっと調べてみようかな、と思って購入。"History of Marijuana"とあるから入門っぽいかなと、軽い気持ちで買ったのだが、有名なウィリアム・バロウズが序文を寄せていて、ちょっと初っぱなからハードだったか? 確かに建国の父ワシントン(がマリファナをやっていた…かも)の話から始まって、歴史書なのだが、目次まで特殊な用語(あえてスラングとは言わないが)だらけで、ちとつらい(英語としては読みにくいわけではない)。
『人格改造マニュアル』
1996 鶴見済(著) 太田出版 
 古本屋で見つけて購入。ちょうどドラッグ問題に関心が出てきたところだしね。…って、ページをめくると、かなり読んだことがある。もしかして持っているんじゃないかという強い疑惑が。
『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』
1993 鶴見済(著) 太田出版 
 古本屋で見つけて購入。『完全自殺マニュアル』への反響をまとめた本(よく考えるとボロい商売だ)。でも、人類学的には元の本を読むより面白いかも知れない。
『アジル・コンペティション: 「速い経営」が企業を変える』
1996 スティーブン・L. ゴールドマン, ロジャー・N. ネーゲル, ケネス・プライス(著) 紺野登(訳) 日本経済新聞社 
 STSNJ研究発表会の予稿参照のこと

お買い物 2002年3月ぶん
  今月は今ひとつ「愉快な」本に出会わなかったので、文句が多いです。そのわりには「今月のオススメ」が多いけど…これは、それらがあらかじめ「オススメ」だと判って買っているケースなんですね、実は。

『大学院教育の研究』
1999 バートン・クラーク(編著) 潮木守一(監訳) 東信堂 
 独英仏米日の、主として大学院以上の高等教育と研究についての制度研究。まぁ、そのまんまです。大学関係者は一読あれ。
『現代アラブの社会思想: 終末論とイスラーム主義』 講談社現代新書1588
2002 池内恵(著) 講談社 
 「現代アラブの社会思想」は「終末論とイスラーム主義」だけなのか? 新書にないものねだりをするのもナンですが、このタイミングにこの内容は、プロパガンダとまでは言えないかも知れないが、やや不満が残る。例えば、どこかで浅田彰か誰かが主張していたけど、今このタイミングでこそバーキルッ=サドル(『イスラーム経済論』『イスラーム哲学』『無利子銀行論』)やシャリーアティー(『イスラーム再構築の思想』 …これはイランだけど)をわかりやすく紹介する試みは不可能だったのか?
『干潟の民主主義: 三番瀬、吉野川、そして諌早』 <今月のオススメ>
2001 永尾俊彦(著) 現代書館
 非常に綿密な取材がされている良書。タイトル通り、東京湾の三番瀬ほか、三つの環境問題が取り上げられているわけだが、それぞれにアプローチが違っているのが面白い。三番瀬はやや週刊誌的な「巨悪を暴く」という側面が強い。それに対して後の二つは地域の市民運動という観点からの取材にウェートが置かれている。タイトルどおり「干潟の民主主義」である。特に諌早湾については、ではなぜ「賛成派」住民が賛成するのか、という観点にも切り込んでおり、民族誌的価値も高いと言えよう。総覧して言えるのは、公共事業に賛成であっても、それなりの正統性と合理性をもって住民は行動しているのであり、それが深刻な地域対立や地域エゴに見えてしまうのは、やはり行政が適切にニーズを把握していない(ふりをして利益誘導を謀る)からだということ。また、市民運動の推進は極めて平等主義的な民主主義の構築を可能にすることである。逆に言えば、家父長的強権支配というのはえづけをするためのエサの供給源がある場合にのみ有効であるということかもしれない。
『リキッド・モダニティ: 液状化する社会』 <今月のオススメ>
2001 ジークムント・バウマン(著) 森田典正(訳) 大月書店 
 タイトルが安っぽいからか、京大の図書館に入ってないが(だから慌てて買った)、『危険社会』の流れをくむ、立派な社会学本である。ポスト・モダン社会のソフトな支配に警鐘をならす(雑な要約ですいません)。『要塞都市L.A.』と合わせて読むと理解しやすいでしょう。
"Handbook of Science and Technology Studies" Rev. Ed  <今月のオススメ>
2002 Sheila Jasanoff (編) Sage Publications Ltd
 アメリカのSTS学会である4S (The Society for Social Studies of Science)が主体になって編纂されているハンドブック。よく欧米の学者と話していると出てくるのでとりあえず購入してみましたが、800ページ強の大著で、うーん、って感じではある。そういえば、"The Science Studies Reader"もまだ読み終わっていないなぁ(苦笑)。
『沈黙の向こう側: インド・パキスタン分離独立と引き裂かれた人々の声』 <今月のオススメ>
2002 ウルワシー・ブターリア(著) 藤岡恵美子 (訳) 明石書店 
 印パの分離独立のさいの虐殺に関わる問題を、主に「語り」から、そして「弱者」(女性やアウトカースト)の問題からときおこす。その上で、書くことの暴力性やそのことについての「書かれる側」の不信感まで視野に入れている。いってみればまさにカルスタ本流のような本。こういった迫力のある課題を扱えない本邦のエセ・カルスタとは格が違いますな。著者はフェミニズム系出版社の創設者の一人とのことで、ややアクティヴィストよりの人らしい。そのせいもあってか、参考文献などはやや抑えめである。良書。
『オランダモデル: 制度疲労なき成熟社会』 <今月のオススメ>
2000 長坂寿久(著) 日本経済新聞社 
 ワーク・シェアリング、NPO、オトナの自由主義(同性愛者の結婚、マリファナ、安楽死等)でニュースになることが多いオランダ社会と政治の実状を、シンパシーを込めながらも問題点も押さえて手堅く紹介。現代社会の必読本。それにしてもあれですな、オランダのポリシーというのは欧米の諸大国に比して、誰でも理解しやすく、シンプルで、達成も優しそうと言うのも大きなメリットですな。たぶん、能力とパワーに自信満々で高い目標と複雑な評価基準を持ち、膨大な人材を投入する巨大なプロジェクトを編み上げたがる米仏らに比して、彼らは自国が経済的にも人材的にも強い制約を受けているのを良く知っているのだな。無知の知、という感じ。我が国がオランダと同じポリシーを採用できるかは疑問だが、官界を筆頭に社会の諸セクターが専門知識も教養も指導力も(英米仏独と比較すれば)著しく欠いているのは自明なのだから、このあたりのエトスには学ぶものが大きいかもね、と言ってみたりして…。
『パブリック・ガバナンス: 改革と戦略』 NIRAチャレンジ・ブックス
2002 宮川公男, 山本清(編) 日本経済評論社 
 総合研究開発機構(NIRA)のこのシリーズは『多文化社会の選択: シティズンシップの視点から』についで二冊目の購入。『多文化…』はだいぶ左っぽい議論も挿入されていたが、こちらはせいぜい民主党(日本の、ね)といったところ。NIRAのシリーズはねらいが読みづらい。でも、総体的に見て、けっこう重要なシリーズではある。
『知識とイノベーション』
2001 一橋大学イノベーション研究センター(編) 東洋経済新報社 
 「イノベーション」を企業内、企業間、国家政策のレベルで研究した論文を集めている。数行で感想を述べるには(ワタクシ個人のポジショニングに際して)ナイーヴな問題なので避けさせていただきますが、それなりに(知的に)楽しめる研究であるのは確か。
『アメリカに学ぶ市民が政治を動かす方法』
2002 バリー・R.ルービン(著) 日本評論社 
 STSNJのメンバーでもある下斗米氏が翻訳に関わったとのことで紹介を受ける。直接的に政策とNPOに関わっている人ではなくても、アメリカ文化論として十分面白い。
 ところで余談。「高齢者を強力に代弁する全米退職者協会(AARP)の設立を受けて、ある若者二人が自分たちの世代の意見をきちんと聞いてもらおうと、「リード・オア・リーブ」(Lead or Leave)を設立しました。それは、限られた連邦予算を、高齢者向け医療保険制度に使うか学資融資制度に使うかを議論するためでした」(p.28) …イヤな議論だなぁ(ちなみにLead or Leaveはすでに解散した模様)。
『マルチカルチュラリズム』
1996 チャールズ・テイラー, スーザン・ウルフ, スティーヴン・C.ロックフェラー, マイケル・ウォルツァー, ユルゲン・ハーバーマス, K.アンソニー・アッピア(著), エイミー・ガットマン (編) 佐々木毅, 辻康夫, 向山恭一 (訳) 岩波書店
 ちょっと評価の難しい本。色々な論点は提示されているのだが、料理がお上手とは、お世辞にも言い難い。テイラーによる「問題提起」はそれなりに読む価値があろうが、それに対するレスポンスとしては、ハーバーマスを含めてあまり気が利いていない。アッピアのものが比較的興味深いが、編者のガットマンの論考などは、普遍主義と多文化主義へのありきたりの誤解を追認した上で、「ちゃんと考えることが大事である」というありきたりの結論を提示するのみである。
『人間の条件』 ちくま学芸文庫ア-7-1
1994 ハンナ・アレント(著) 志水速雄(訳) 筑摩書房 
 発表の準備用に購入。ってか、持ってたような気もするんだよなぁ(笑)。
『革命について』 ちくま学芸文庫ア-7-2
1995 ハンナ・アレント(著) 志水速雄(訳) 筑摩書房 
 発表の準備用に購入。…あまり使わなかった。
『ファシズム時代のシオニズム』 叢書・ウニベルシタス705
2001 レニ・ブレンナー(著) 芝健介(訳) 法政大学出版局 
 初代シオニストと目されるヘルツルが、ヒットラーのプロトタイプとも言える反ユダヤ主義者ルェーガーがウィーン市長に就任するのを後押ししたという逸話から始まる、シオニストの壮大な「自民族」に対する裏切りの歴史。この問題はかつてアレントが提示して、広範な議論を巻き起こしたのであるが、そういった問題に対してある程度(アレントに有利な)結論を提示しうるであろう。ただし、著者はどちらかというと運動畑の人であるようで、やや先走るきらいが無くはない点には注意を要しよう。また、ヘルツル関係の部分も、原則として公刊された英訳資料に寄っているようである(ただ、この点について、訳者はドイツ語原典にも当たって、内容に問題がないことを確認したという)。ただ、こうした議論が日本でも重要なのは訳者も指摘するように、パレスティナ問題においてイスラエル非難を求めるあまり、ナチスによるユダヤ人虐殺の史実そのものまで否定してしまう論調まで存在するからでもある。現在のイスラエルが、ナチス・ドイツのまさに鏡像として立ち現れたという事実は、十分に考慮されるべきだろう。
『フランス革命期の公教育論』 岩波文庫
2002 コンドルセ 他(著) 阪上孝(編訳) 岩波書店
 下に論ずる『学歴の社会史』にも明らかなように、近代日本では教育を安価にする努力は優先順位の高いものではなかった。比して、フランスにおいては革命当初から生涯教育を含めて各段階の教育の意義が個別に論じられ、かつ当事者負担の弊害が列挙された上で、教育は国家負担でおこなうべしと論じられていることは感動的ですらある(いや、数年前だったら別に感動もしなかったろうけどね)。しかし「より高度の教育施設は、それらが向けられる職業や役職、それに従事しうる、あるいは従事することを望む個人の数と同じ比率で減少すること」(p.129)という200年以上前の人間にも明らかな原理も判っていない政治家・官僚が多いこの国にはこまっちゃうよね。
 あと、余談だが、サヨク流の煽り方も200年間あまり変わらないものの一つか。特に「(多くの証拠から)判明したことだが、無知と迷信のあとにつづく知識の残骸を踏み越えて支配へと進むために、科学と技芸を全滅させるというのが、陰謀家どもの立てた計画の一つであった」(p.279)はグ〜。今度使お。
『先住民社会と開発援助: インドネシアイリアン・ジャヤ州ドミニ集落の事例』
2002 川合信司(著) 明石書店
 民族学会での発表につかう資料なので、解説はそれをまとめるときにでも。
"Tourism Alternatives : Potentials and Problems in the Development of Tourism (Publication of the International Academy of the Study for Tourism)"
1994 Valene L. Smith (著), William R. Eadington (編)  John Wiley and Sons Ltd
 民族学会での発表につかう資料なので、解説はそれをまとめるときにでも。
"Civil Society: Challenging Western Models"
1996 Chris Hann, Elizabeth Dunn(編) Routledge, an imprint of Taylor & Francis Books Ltd
 日本は東欧と比較される(というのは、同一視されているという意味ではない)社会だということを発見。ちょっと笑えた。
『大型類人猿の権利宣言』
2001 パオラ・カヴァリエリ, ピーター・シンガー(著) 山内友三郎, 西田利貞(訳) 昭和堂 
 大型類人猿にも生存権を広く認めていこうという運動のマニフェスト。ちょっといかがわしい感じを抱くのは正統だと思われる議論で、たぶんボクも西田利貞の名前が入っていなければ買わなかった。最初の宣言部分以外は、ドーキンスやダイヤモンドなどの識者が関連するエッセイを寄稿しているだけで、あまり読む価値はない。多くの人間が飢えと暴力に脅かされているときにゴリラのことを心配することが出来るかという疑問に、大型類人猿の権利を提唱することは今実際に生命を脅かされる人々の権利を制限することにはつながらない、としか答えられていないのは弱い(し、事実にも反する)。たしかにこの主張は二つの人類集団に適応されたときは完璧な正論である(救済にトリアージはない)。逆説的だがそれゆえにこの議論の「もっともらしさ」は議論が適応されたグループの権利を保障しない。また本書の議論には大型類人猿を特別扱いすべき根拠にも乏しい。…これは酷評というのだろうか?
『バーチャル・ユニバーシティ: IT革命が日本の大学を変える』
2001 バーチャルユニバーシティ研究フォーラム発起人(監修) アルク 
 目次を一別してちょうちん記事が多いなぁ、と思われるだろうが…その通りである。大学教育という「サーヴィス」が商品として通用することへの楽天的な信頼には眼がくらくらするし、現状報告も(なんか一昔前の「ニフティサーヴの使い方」かなにかを読まされているみたいで)はなはだ心許ない。いっぽうで、十分な人件費が保証されさえすれば、この流れに乗ることは益々人間の生き血をすすることが増えている大学システムと生き血を提供している「若手」が生き残る唯一の方式である可能性もある(そのためには提供されるサーヴィスのクオリティはどうでもいい、というわけではないが)。つまりここで示唆されるのは例えば伝統的な教授職ではなく、チューター(本書では「メンター」などと呼ばれている)などとしてのPDの採用、といったことである(う〜ん、楽しくなさそうだ)。…でも、今の日本だと、そういう人件費はめちゃくちゃケチるんだろうなぁ、と思うと、やっぱりこの動きは指示できないと言う気もする。
『学歴の社会史: 教育と日本の近代』 新潮選書
1992 天野郁夫(著) 新潮社 
 さて、昨今の関心に引きつけて感想を述べる。日本の教育史におけるキー・パーソンは言わずと知れた福沢諭吉と森有礼である。この二人が二人ながらに高等教育を富裕層のものと考えていたのは面白い。福沢に至っては、授業料というシステムを発明したのは自分であると誇り、慶応は当時としては図抜けて高額の授業料を徴収していた。しかし、庶民の一般的な感覚としては教育とはただであるべきものであり、早稲田などは大隈重信がずいぶんと私財を投入しており、それも難しくなったので授業料滞納者の退学を勧告したところ暴動がおこったという。しかし、特権と責務のようなキリスト教的考え方が無かったのは不思議はないとして、高等教育が「国家の須要」に応えるものとして企図されている以上、それにワザワザ高い金出して人が集まってくると考えるってのも不思議なものだ。そこで、民間指向の強い福沢は私利私欲で「学術の企業家」たるを認める。また森については、政府は徴兵制に関する得点を用意するわけである。このあたりから「学歴」を可能性の証明ではなく、すでに獲得された権利と見なす我が国の風潮が形成されているのかもしれないと思ったりした。
『多文化社会と表現の自由: すすむガイドライン作り』
1997 湯浅俊彦 武田春子(編) 明石書店 
 結局、カルスタと倫理学の最終的なアウトプットはかくあるべき、という内容の本。しかし、ガイドラインとか基準とか聞いただけで慄然とする気持ちを抑えることができない。じぶんの頭で考えられないのなら倫理基準なんか守ることないじゃん、とか言ってはいけない…んだろうな、もちろん。…ちくしょう。
『クローズアップ現代〈Vol.2〉21世紀の出会いサイト』
2001 NHK「クローズアップ現代」制作班 (編) 日本放送出版協会 
 『〈vol.1〉問われる日本の「人」と「制度」』は以前に購入。『〈vol.3〉日本は変わるのか』はまたそのうち。このシリーズは綿密に調査された30分番組用の情報が数ページに凝縮されているので、社会問題を一覧できるという意味で大変有用性が高い(無論、これ読んでなにかを論じる、というのには不十分ではある)。できれば参考文献のリストなどを用意してくれるとなお良かったのだが(笑)。
『ファミリズムの再発見』
1995 井上真理子 大村英昭(編) 世界思想社 
 ここ数年、結局諸悪の根元はセックスよりも家族なんじゃないかと思うことがしきりである。そこでファミリズムというタームは魅力的なのだが、編者たちによる解説は今ひとつ面白くない。元ネタ("Minimal Family")のチェックが必要か? それに対して、近代が個人をつくると主張したデュルケムに抗して、座敷を例に近代化がワタクシを圧迫すると論じた(『民俗のこころ』から)民俗学者高取正男の再評価を狙う大村論文はちょっと面白いが、これも後半の議論へのつなぎ方が今ひとつな感じ。
『メディア・トリックの社会学: テレビは「真実」を伝えているか』
1995 渡辺武達(著) 世界思想社 
 NHK特集『ムスタン王国』のやらせ問題、反原発広告がテレビ会社に拒否された問題、テレ朝報道局長が「偏向した」選挙報道を指示したと発言した問題(所謂椿発言問題)の三点を取り上げ、メディアについて論じている。重要な問題であるのは疑いがなく、また論点も大筋で悪くないのだが、これが「社会学」かってのには若干異論が…。っていうか、これを「社会学」という枠でしか提示できない日本の学問状況の問題だろうか?
『日本の公安警察』 講談社現代新書1488
2000 青木理(著) 講談社 
 以前、公安調査庁から流出したというマル秘文書なるものが出版されて話題になったが、その歴史的背景や手口、公安調査庁と公安警察の違いなどについて勉強になる。特に、尾行やスパイの利用に関わる部分などは悲喜こもごもで、怒りと同時にささやかな同情も禁じ得ない。
『ビジネスモデル特許と企業戦略』 丸善ライブラリー333
2000 木村靖夫(著) 丸善 
 う〜、読みにくい。用語が異質なので、一度では頭に入ってこない。ということで寸評は先送り。ごめんなさい。でも、今後社会のあらゆるセクターにとって重要な話ではある。
『消えゆく森の再生学: アジア・アフリカの現地から』 講談社現代新書1479
1999 大塚啓二郎(著) 講談社 
 日本、スマトラ、アフリカ、ベトナム、ネパールなどの森林利用についてのフィールド・リサーチの報告。著者は経済学者。だからというわけでもないが、やや図式を単純化しすぎる嫌いがあり、承伏しかねる部分も少なくない。しかし、共有地/開放地などの概念整理、生活支援のレベルに留まる資源利用しかされていない森林の管理に有効な共有地システムが現金収入を狙った木材伐採を目的とした森林利用の場合に有効ではないという指摘、また開発援助としての(ユーカリ・ベースの)植林や焼き畑からアグロ・フォレスタリーへの転換の提唱など、有益な議論は多い。というよりも、内容が詰まりすぎていて解説不足や未消化も少なくないと言えよう(この本を読んだだけではアグロ・フォレスタリーが何か、読者は判らないであろう)。新書発行からすでに3年が経過しているが、研究の全容が専門書として刊行されることを望むものである。
『性同一性障害: 性転換の朝(あした)』 集英社新書20  <今月のオススメ>
2000 吉永みち子(著) 集英社 
 性同一性障害がメディアなどで取り上げられることも増え、また比較的当事者の発言が活発な分野ではあるが、問題のデリケートさも反映して、これまで一歩引いたところからキッチリ取材して、一冊にまとめられた本は珍しかったと言えよう。本書はその難しい問題に巧く取り組んでいるように思われる。新書でもあるし、是非オススメしたい一冊。
『銃夢Last Order』 2 ヤングジャンプコミックス
2002 木城ゆきと (著) 集英社 
 銃夢シリーズの続編。ちなみにこちらがLast Orderシリーズの一巻。さすがに前シリーズのほうが勢いがあったが…。まぁ、こちらはこれからか?

お買い物 2002年2月ぶん
  ちょっと解説が長くなっていて、読みにくいかも知れません。フォーマットはちょっと考えます。 

『アメリカの文化戦争: たそがれゆく共通の夢』 <今月のオススメ>
2001 トッド・ギトリン(著) 疋田三良, 向井俊二(訳) 樋口映美(解説) 彩流社
 「サイエンス・ウォーズ」は日本でも話題になりましたが、それが「カルチャー・ウォーズ」の局地戦の一つであることは意外と見逃されていたような気がする。その意味で、本書が訳されたことは、やや遅蒔きながらめでたいのではないだろうか。ただ、アメリカの政治状況の中で、そこへの介入として書かれた本であるため、おそらくいきなり読んでも判りづらいかも知れない。その点を考慮して長めな解説がついているわけだが、たぶんこの解説も今ひとつ判りにくい(理由も含めてなんか一文書きたい気も)。
『アフォーダンスの構想: 知覚研究の生態心理学的デザイン』 <今月のオススメ>
2001 佐々木正人, 三嶋博之(訳) 東京大学出版会 
 アフォーダンスのうまい教科書はないかなぁ、と思って買ってみた本。特に距離感の問題などは興味深い。結局、距離感が判るってのは何なんですかね? 複合的に判断されているってのは判るんだけど…。「未開人」の一部は遠近法という前提がなく、遠くにいるもの(例えば象)を小さく書くと本当に小さな象が描かれていると判断するという議論はよくあるが、これは見かけより「正しい」判断なのかと思ったり(でも、ターンブルに初めて草原に出た森の民が遠くの動物が本当に小さいのだと間違って_これはそう言って良かろう_判断したケースも出ていたしなぁ)。
『現代思想の冒険者たち17 アレント: 公共性の復権』
1998 川崎修(著) 講談社
 「現代思想の冒険者たち」シリーズは入門書としてできがいい(名前は恥ずかしいが)ので古本屋で見つけるとチマチマ集めていたりする。しかし、解説する対象によって「できがいい」と評価するための基準が違いますな。アレントの場合は、元がさほど複雑な話ではないので、きちんと関連情報を収集して、時代背景と政治的バランスに配慮しつつ整理されていることが重要で、さほどわかりやすさは要求されない。その意味で本書は合格であるが、デリダやらヴィトゲンシュタインやらといった本で味わえる「ほぉ、そう読んでいくのか」という驚きは味わえないという点でちょっとつまらない。
『超巨大市場インド』
2002 島田卓(著) ダイヤモンド社 
 表紙のデザインや全体的な「軽さ」から、トンデモ本かと思いきや、なかなかしっかりした本である。著者はインドビジネスセンター社長。
 ビジネスサイドから第三世界に対するどんな情報が要求されているのかを考える上で面白い。例えば筆者は、インドというとカースト問題をどうしているのか、と聞かれることが多いと述べた後、敢えてカースト問題を「無視」して「成功」した事例をあげている(例えば社員食堂を大きな共有空間にしたり、事務員にも毎朝掃除をさせたり)。私も、もしグローバリゼーションが不可避なのであれば、こういった介入はむしろ好ましいと思うが、その実体の効果(例えば彼らの価値観や相互のコミュニケーションに与える影響)に関して研究があるという話はあまり聞かない。こういったことにも人類学が答えていけるようにできまいか?
『沖縄返還とは何だったのか: 日米戦後交渉史の中で』NHKブックス889
2000 我部政明(著) NHK出版 
 沖縄に関する本と言うよりは「安保」に関する本である。小笠原関連の論文を書いているとき、日米間の交渉(特に核貯蔵など)に関する知識が足りないことが判ったので、とりあえず買ってみたのだが…ボクの知識が足りないんじゃなくて、判ってないんだね、ようするに。こんな曖昧な、ストレスのたまりそうな分野の歴史研究なんかよくやるなぁ、と思ったり。
『海洋危険生物: 沖縄の浜辺から』 文春新書231
2002 小林照幸(著) 文藝春秋 
 クラゲ、サメなどを扱っているが、一番重要なのは「ハブクラゲ」という、本土にはいないのでちょっとなじみのないクラゲ。どうも、昔から沖縄にも少数生息していたらしいが、問題になり始め、命名されたのは78年のことであるという。それが命名されてみると、遡って「刺された」という人も出てくるあたりが、問題の社会構築という視点からも面白い(勿論、最近生息数が増えてきたと推測され、原因についても考察されている)。あと、「人間に対して安全な動物だと思われている」マンタの「危険」がちょっとオカシイ(ジュゴンでもそういう話を聞いたことがある)。
『カルロス・カスタネダ』 ちくま学芸文庫 シ 14-1
2002 島田裕巳(著) 筑摩書房
 学芸文庫には珍しい書き下ろし。筑摩から本が出ると、オウム事件の影響で大学を追われた島田裕巳氏、久々にアカデミズムのメインストリームに復帰、という感じがする。内容は、自分の若い頃の体験を交えつつ(そういう意味では芸風は変わっていない)、カスタネダの一生を振りかえるという進行。ポジションは、カスタネダに対する諸非難(嘘つき、ほら吹き、そもそもカスタネダ自身が存在しない、等々)もそれなりに紹介しつつ、最終的には強いシンパシーを表明している。まぁ、そうでなっきゃ本なんか書かないのだろうけど、ちょっとまじめすぎるというか、直球すぎてつまらない感じも受ける。
『世界の放射線被曝地調査: 自ら測定した渾身のレポート』 ブルーバックス B-1359
2002 高田純(著) 講談社 
 サブタイトルがブルーバックスじゃないみたいですが。
 東海村の事件でずいぶん不安を感じられた方もおおいかとおもいますが、そういう方のためにも特別章「あなたにできる放射線防護10の対処法」(←オビから。日本語としてビミョウに変)は有用。
『成果主義と人事評価』 講談社現代新書 1574
2001 内田研二 (著) 講談社 
 作者の意図に反して背景を読み込むことが許されるなら、問題なのは仕事の「評価法」転換そのものではなく、仕事の現場が専門家、細分化して一人の上司が部下の能力や成果を把握しきれなくなったことの問題なのだな。だから、「成果主義」というのはよく言われるように「アメリカ型」なのではなく、アメリカでも比較的新しい問題と見るべきだろう(もちろん、アメリカ人が無意識に「成果主義者」だった可能性があるとしても)。従って、知識社会という言い方も、知識がなんらかの生産性を獲得した社会という意味で理解されることが多いが、要求される知識の量と専門性があがったということでもあろう。そう考えてみて、やっと何でサラリーマンがドラッカーやトフラーを必要とするのかが判った(ような気がする)。
『アジアの国家とNGO: 15ヵ国比較研究』
2001 重冨真一(著) 明石書店
 アジアで括らないで、「東」「東南」「南」で分けて三分冊にしてくれた方が経済的に助かるよね。でも、そうすると南アジア編(ボクが必要とするところ)が一番売れなくて、結局その部分は出せなかったりするのだろうか? 発表用の資料なので、解説はそれをまとめるときにでも。
『ヨーロッパがみた日本・アジア・アフリカ: フランス植民地主義というプリズムをとおして』 教科書に書かれなかった戦争 PART30
1998 海原峻(著) 梨の木舎 
 おそらく「教科書」的に使われることを意識した本なのだと思われる。そのためか、叙述はやや平板で、ついでに告発的な印象を受ける(誰を?)。なぜ上記ギトリン本でも扱われるように、教科書というのは各国で政治的な論争を引き起こすか判った気がするぞ(笑)。後半部分(本当にヨーロッパ人が悪いことをしまくった時代)はともかく、例えば、モンテーニュの反ユーロセントリズムを「現実的である」などという評価で終わらせないで(だいたい、そういうとき現実的って使うか?)、その文脈にも眼を配らないと正しい知識とは言えない気がする。
『フラーがぼくたちに話したこと』
1990 リチャード・J. ブレネマン(著)  芹沢高志, 高岸道子(訳) めるくまーる
 先月の『バックミンスター・フラーの世界』でなんか火がついたようで、購入。子どもの頃読んで、その非ユークリッド的世界観にいたく感動した記憶がよみがえった(キリコやピカソが好きな子どもだったんです。まぁ、そういう非ユークリッドとはまた別の幾何学コスモロジーだが)。学校の数学が面白くない、と思った経験のある子どもは必読であろう(中学生ぐらいなら十分理解可能だと思う)。
『奇跡の村: 隠れキリシタンの里・今村』
2002 佐藤早苗(著) 河出書房新社 
 なぜか隠れキリシタンの里のリストからも外されてしまっている、しかし数多くのキリシタンの住まっていた村、今村の物語。こういう「日本」を異化する場所の存在は貴重である、と思う。キリシタンであることから移民を選び、混血化し、さらにマージナリティを深めていく人々の歴史が描かれている。最終章は今に生きる慣習に割かれているが、人類学者としてはここをさらに書き込んで欲しかった(著者はノンフィクション・ライター)。
『遺伝子組み換え食品の「リスク」』 NHKブックス911
2001 三瀬勝利(著) NHK出版
 中立的な目配りを効かせようという努力は買える一冊。解説としてもわかりやすい方だと思う。ただし、往々にしてそういった本は専門家の味方である。こういうのはバランスを取ろうと思ったら、一人で書いちゃだめなんじゃないかな。とりあえず、GMO関連用語集を近いうちに準備するつもりなので、活用させていただきます。
『NHKスペシャル 家族の肖像 密告: IRAテロリズムへの決別』
1998 山本修治(著) NHK出版 
 IRA編は「家族の肖像」の中でも迫力という意味でダントツだった。どんな情報を元に取材したのか興味があったのだが、今回、書籍版を見つけて初めて『IRA潜入逆スパイの告白』(マーティン・マガートランド)という元ネタがあることを知る。ただ、こういう本って、その信憑性とか極東に住まっていては確認のしようがないし、後日談も知ることができるので、やっぱりNHK特集は必要なのである。
『ペストの文化史: ヨーロッパの民衆文化と疫病』 朝日選書533
1995 蔵持不三也(著) 朝日新聞社 
 古本屋で発見。章ごとの題名が魅力的で読む気をそそるが…まだ読んでません。
『中世の村を歩く』 朝日選書648
2000 石井進(著) 朝日新聞社 
 古本屋で発見。これもそのうち読みます。
『ヘーゲル・大人のなりかた』NHKブックス725
1995 西研(著) NHK出版 
 古本屋で発見。そのうち読みます。
『朝鮮奥地紀行』2 東洋文庫573
1994 イサベラ・バード(著) 朴尚得(訳) 平凡社 
 古本屋で発見。『朝鮮奥地紀行』1も探すぞ(笑)。は『日本奥地紀行』(平凡社ライブラリー329)でも有名な、19世紀に世界中を駆け巡って、帝国主義の先兵を務めた女性探検家として、有名なリヴィングストンらと比肩しうる存在である(それが名誉なことかどうかは議論の分かれるところであろう)しかも、この朝鮮旅行の時、彼女はなんと63歳の高齢である。好奇心なのか、使命感なのか、何が楽しくてやっているのか今ひとつ理解し難い。しかし、朝鮮と日本について、19世紀に同じ著者が旅行記を残しているというケースは他に(たぶん)無いので、これは貴重な資料なのである。
 今回検索をかけたら『ロッキー山脈踏破行』(平凡社ライブラリー204)というのもあることが判った。
『文化政策入門: 文化の風が社会を変える』 丸善ライブラリー377
2001 池上惇, 端信行, 福原義春, 堀田力(編) 丸善 
 
『サトラレ』2
2002 佐藤マコト (著) 講談社 
 映画にもなって一躍有名になった思考実験マンガ。思考を周りの人間に漏らしてしまう(が、屡々天才的な能力を発揮する)新人類サトラレを巡る人情ストーリー。個人的には医者になったサトラレを巡る話が自分の研究と関連する部分として面白いかな。かなり難しい設定なので、毎回作者が苦労して書いている様子が伝わってくるのもよい(さて、いつまで続くやら)。一巻めはこちら
"Visions of Sts : Counterpoints in Science, Technology, and Society Studies" (Suny Series in Science, Technology, and Society)
2001 Stephen H. Cutcliffe, Carl Mitcham (編) State University of New York Press
 『鯨と原子炉: 技術の限界を求めて』 のラングトン・ウィナーらのテキストを含むリーダー。巻末に、STS関連文献の簡単な紹介付きリストがある。紹介は全部1パラグラフ。日本の本だったらもう少し丁寧に解説を付けるよなぁ、と思ったり。

お買い物 2002年1月ぶん
  今月は円が安くて洋書が買えません。このままズルズルと円安が続くのだろうか? 困った。

『ファストフードが世界を食いつくす』 <今月のオススメ>
2001 エリック・シュローサー(著) 楡井浩一(訳) 草思社 
 今月買った本ではないのですが、インドに持って行ってしまって、むこうから船便で送り返したので、読んだのが最近。マクドナルドは屡々グローバリゼーションの象徴として、先進国でも第三世界でも焼き討ちをかけられたりする。本書は、実際にマクドナルドが(象徴的な意味を超えて)えげつないかを突っ込んで記述してあり、予想はしていてもビックリさせられる。ファストフードの歴史は効率の追求に始まり、その手段は生産者をカモり、子どもを操り、移民を搾取することへと発展していく(特に8章の牛肉加工工場についての記述は衝撃的)。う〜ん、それでも食べちゃうんだよなぁ。安いし。
『バックミンスター・フラーの世界: 21世紀エコロジー・デザインへの先駆』 <今月のオススメ>
2001 ジェイ・ボールドウィン (著)  梶川 泰司 (訳) 美術出版社
 バックミンスター・フラーが歴史的に極めて興味深い、希有な存在であることを疑う理由はないのですが、さてその議論のリアリティというとどうなのか、というのは多くの人が疑問に思う点であると思われる。ジオデシック・ドームで建物は建つだろうけど、じゃあそれが今までの建物と比べて本当にすごいのか、ってことね。本書はフラーのデザインの成果が数多く紹介されており、わかりやすい入門書であると同時に、そういった懐疑する半可通である我々の疑問にも答えてくれる。…まぁ、それですぐに疑問が晴れるってわけでもなかろうが。
『誰が誰に何を売るのか?: 援助交際にみる性・愛・コミュニケーション』 <今月のオススメ>
2001 圓田浩二(著) 関西学院大学出版会
 これも昨年の夏頃の本のようですが、最近気がつきました。 …そのうちどっかに書評します。
『反グローバリゼーション民衆運動: アタックの挑戦』
2001 ATTAC (編) 杉村昌昭 (訳) 柘植書房新社
 国際金融取引への課税(トービン税)とそれを利用した地球的な問題(環境や貧困)への対応を求める市民運動ATTACの活動の解説書。関連団体でしゃべるために付け焼き刃で勉強しました(笑)。
『鹿児島の本格焼酎』 かごしま文庫62 (※今のところアマゾンにデータなし)
2000 鹿児島県本格焼酎技術研究会 春苑堂出版
 上記のATTACの勉強会のあと流れで参加した聞き酒会で購入。スローフードの精神でいきましょう。
『トランスクリティーク:  カントとマルクス』
2001 柄谷行人(著) 批評空間 
 『倫理21』『原理』などに続くNAM連動本シリーズ。昨年10月に出版され、模様眺めしてたら12月10日ですでに3刷なので、売れているのだろう。2ちゃんねるの哲学板を見ていても判るとおり、具体的な運動との連動は、その運動にコミットしない人にとっても著作を魅力的にするようだ。内容的にはカントとマルクスからアソシエーショニズムの可能性を回収するのだ、といういつもの主張が詳しく展開されている。
『有機農業: 21世紀の課題と可能性 有機農業研究年報〈Vol.1〉』
2001 日本有機農業学会 (編) コモンズ
 日本有機農業学会というのがあるようですね。ウェブサイトも無いようなので、今まで気がつかなかったのですが、一般の本屋で買える年報が出せているのはリッパです。
『動物化するポストモダン: オタクから見た日本社会』 講談社現代新書1575
2001 東浩紀 (著) 講談社
 う〜ん、データベース・モデル、はどうよ? ニューアカの魅力であり問題点であるのは、もうちょっち議論を深めるべき概念と、通説化した議論が並列で示される点にあり。でも、人文・社会科学への注目が集まる可能性という意味では、売れるといいな(笑)。
注)現在、東氏が日本のThe Postmodernであるとしても、「動物化するポストモダン」という言葉は勿論ギャルゲーの前でサルになっている著者の隠喩…ではない…たぶん。
『京都学派と日本海軍: 新資料「大島メモ」をめぐって』  PHP新書185
2001 大橋良介 PHP出版
 戦前、京都学派が軍に協力したというのは実は間違いで、海軍と京都学派は開戦派の陸軍を牽制するために協力体制を築いたのだ、というお話。プロジェクトXその時歴史が動いたになりそうな迫力のストーリーですな。ただ、こういった歴史のどんでんがえしモノは『なぜ、ナチスは原爆製造に失敗したか: 連合国が最も恐れた男・天才ハイゼンベルクの闘い』[上巻] [下巻] なんかもそうなんですが、史実と物語の区別が限りなく曖昧だからなぁ(だからこそ「その時歴史が動いた」になるのだが)。ただ、本書は京都学派の議論についての入門や、「哲学の実践性」についての議論のネタとしても仕えそう。
『特殊法人解体白書: ヒト・カネ・利権の全データ』 中公新書ラクレ34
2002 堤和馬(著) 中央公論新社
 中公なので改革イケイケのネオリベ本かと思ったら著者は特殊法人労連のヒトだった。従って、特殊法人の現状のいい加減さと失敗続きの改革を攻撃しつつ、単純な「解体」に賛成しているわけではない。特に(殆ど記述が無いせいもあるが)日本育英会などの国民生活を直接的にサポートする法人をなくすことには批判的。
『WTO: 世界貿易のゆくえと日本の選択』 平凡社新書109
2001 村上直久(著) 平凡社
 そのまんま概説書ですね。抱えている問題についてなどは置いておくとして、構造を理解するという意味ではけっこうわかりやすいんじゃないでしょうか?
『人類最古の哲学: カイエ・ソバージュ〈1〉』 講談社選書メチエ231
2002 中沢新一(著) 講談社
 最近あまり魅力的な本がなかったように思いますが、これは基本的なところを押さえていて面白め。
『人文科学に何が起きたか: アメリカの経験』  高等教育シリーズ
2001 アルヴィン・カーナン (編) 木村 武史 (訳) 玉川大学出版部
 この「高等教育シリーズ」、出版元(大学改革派?)の意図は兎も角、いろいろな意味で有用です。今回もアメリカの人文科学の「衰退」を多様な論者が統計を駆使して論じていますが、そこから学ぶべきは多い。著者には『フランス革命と家族ロマンス』のリン・ハントなどが加わっている。
『エスノグラフィー・ガイドブック: 現代世界を複眼でみる』
2002 松田素二, 川田牧人 (編) 嵯峨野書院
 おすすめエスノグラフィーのリスト。大変有用。う〜ん、こうして見ると、必読エスノグラフィーの三割ぐらいしか読んでない。よく院試に受かったモノだ(笑)。
『新しい科学的精神』 ちくま学芸文庫
 2002 ガストン・バシュラール(著), 関根克彦(訳) 筑摩書房
 学術文庫に関してはいまさらそんなことに驚くべきではないのかも知れないが、ハードカバーとくらべて300円ぐらいしか安くなってないってのはどういうわけだ?(笑)
『ニーチェは、今日?』 ちくま学芸文庫
 2002 J.デリダ, G. ドゥルーズ, J=F. リオタール, P. クロソウスキー(著), 林好雄, 本間邦雄, 森本和夫(訳) 筑摩書房
 わりと衒学的なテーマと作者のとりあわせですが、けっこう運動論としても読めるでしょう。
『漂泊の日本中世』  ちくま学芸文庫
2002 細川 涼一 (著) 筑摩書房
 鎌倉の頃は女人禁制の山も、男装すると入れるものだった、という話が面白い。だれか女性は問題になっている山(奈良県大峰山とかか?)に男装して、この本を持って突入してみて欲しい。我が国におけるジェンダー観の歴史には驚かされることが多い。ちなみに能の「道成寺」は白拍子が女人禁制の禁を破る話だが、そういえば掟破りのサンクションはがんばって祈ることで回避されるのである。これは江戸期までそんなもんだったということか?
・『情況』 2002年1・2月号 特集:科学技術とリスク
情況出版
 ちょっと問題のある記事もあるんですが、それは置くとして、科学技術のリスクと市民参加に焦点を絞った、極めて読み応えのある特集。[目次]
・『思想』2002年1月号 特集:グローバル化の文化地政学
岩波書店
 アパデュライが日本語になったのは初めてかな? 他にもT.M-スズキのNGO論などが読みどころか。雑誌なので購入は岩波のサイトから
『現代思想』2002年2月号 特集:先端医療: 資源化する人体
青土社
 [目次] 最近、ちょっといまいちだったんですが、今月号は面白い。
『産業と倫理: サン・シモンの社会組織思想』
1989 中村秀一 (著) 平凡社 
 三月書房で発見(五割引)。
『科学の社会史: 近代日本の科学体制』
1973 廣重徹 (著) 中央公論新社 
 三月書房で発見(五割引)。初版はボクが生まれた年なんだなぁ、とビックリ。

 

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