October 2008アーカイブ

 ジュビリーサウス他からせっつかれたので、とりあえず翻訳。
 こちら("Statement on the proposed “Global Summit” to reform the international financial system")から組織および個人として署名できます。

 国際金融システムの見直しのために提案されている「グローバル・サミット」に対する提言


・背景

 過去数ヶ月は北アメリカとヨーロッパの歴史において最も重要な金融危機のひとつであったと見られる。これに対する反応も歴史的であった。グローバルな景気後退を押しとどめ、市場の信頼と安定性を取り戻すために、北の政府は、銀行の国有化、経営不振の組織への大規模な補助金の注入、それらの金融セクターに対する再-規制といった、前例のない、巨大なプログラムを遂行しようとしている。
 この反応は、世界銀行、国際通貨基金(IMF)および先進諸国によって第三世界に押しつけられてきた厳格な新自由主義的政策と、明白な対称ををなしている。第三世界政府は貿易障壁を取り払い、金融と労働市場の規制緩和を行い、国営事業を民営化し、補助金を撤廃し、社会的あるいは経済的な支出を削減することを求められてきたのである。諸国は、自分たちの役割が厳しく低下していくのを目の当たりにしていた。
 このダブル・スタンダードは受け入れがたいだというだけにとどまらず、自由主義市場原理主義が終焉を迎えたことを示しているだろう。国際的な金融システム、その設計から制度まで、現在の金融及び経済危機の規模によって完全に打ちのめされたと見るべきである。金融システム、その設計と制度は完全に考え直されなければいけない。

・グローバルな危機への真にグローバルな反応

 最近数週間において、世界各国の指導者たちは現在のシステムの不足と、グローバルな金融システムと制度を再構築するための提案を幅広く論じ合うための会議の必要性を認識した。G20は11月15日にワシントンDCにおいて会合を開き、討議を開始する。もちろん、危機に対処するための即時的な手法についての合意は喫緊の課題であるが、我々は一般の雇用者、労働者、低所得世帯、年金生活者やそのほかの極端に脆弱なセクターの人々への対応を優先すべきであると強調したい。我々は、提案されている会合が、性急で、排他的な手法で行われ、結果として必要とされる包括的な対策が取られず、また負担が適切に配分されないことを憂慮している。
 北の国々に起源をもつ危機にもかかわらず、その影響は発展途上国で最も大きなものになるだろう。従って、国際的な金融の制度設計の変革のプロセスの中で、すべての国がその意見を表明することが重要である。多くの国々と市民社会を排除し、性急に準備された会議では、現在のシステムを変容させるための公平で持続的な解決策はもたらせないだろう。これらの奮闘は実際のところ、公的な信用と信頼をさらに傷つけ、またすでにより強力で、整合性があり、公平な金融システムのための地域的な解決策を選択している国々から権利を奪ってしまうだろう[※訳注 Banco del Surが念頭にあると思われる]。


・我々の要求 根本的な再考の時である

 我々、本提言に署名した市民社会組織は、国際的な金融及び経済システムの根本的で遠大な変容を要求する。この目的に適うように、我々は、以下の条件が満たされることを前提に、国連によって招集され、国際的な金融及び通貨の制度設計、またその組織とガバナンスを見直すための会議を開催することを支持する。

1. 包括的な、世界のすべての国々の参加

2.市民社会、市民のグループ、社会運動やそのほかのステークホルダーの代表の参加

3.危機から最も影響を受けた人々が参加する、地域的な協議会の予定と具体的プロセスの明示

4.見通しにおいて包括的であり、問題と制度のすべてに取り組むこと。

5.透明で、提案や草稿段階での書類は公的に利用可能な形で提示され、会議の進展の中で議論されること。

 グローバルな金融システムのための新しい国連のタスクフォース、来るべき国連開発金融会合や、グローバルな会合を準備しはじめたその他の国連機関が十分に活用されるべきである。

 不安定と不平等をもたらしている現在のシステムから、公正で、持続的で説明責任を持った、世界の多数の人々へのメリットを生み出すようなシステムへの移行に手っ取り早い解決策はあり得ない。

Nakanoshima Communication Cafe "the Climate Change and City Planning"

 京阪電車中之島線のなにわ橋駅で(だいたい)毎日行われている中之島コミュニケーション・カフェのラボカフェ・プロジェクトですが、昨日はサイエンスカフェでした。
 
 中之島コミュニケーション・カフェは京阪電車がなにわ橋駅に設置したアートエリア B1を利用して行っています。

 今回のサイエンス・カフェは「気候変動とまちづくり: 地球温暖化は本当に脅威なのか?」と題して、大阪大学 大学院工学研究科の下田吉之教授にお話しいただきました。
 進行役は当センターの平川准教授が勤めました。

 これを目当てに来ていただいた方、たまたまアートエリアの壁面の展示に目をとめて入ってみたら始まったので座っていたという方、コミュニケーション・カフェ全体に興味がある常連さん(候補?)など、20人ほどに最後まで席を立つことなく、議論に参加していただきました。



Nakanoshima Communication Cafe "the Climate Change and City Planning"

 話の内容は、(1)地球温暖化とは何か?、(2)地球温暖化に対する対策とは?、(3)温暖化とまちづくり、という三点に渡りました。

 まず、地球はかつて(恐竜の生きていた時代には)二酸化炭素が1000ppmを超える濃度の世界であり、主として植物の働きによって化石燃料の形でそれらが地下に封じ込められたことによって現在の280ppm前後の値に落ち着いたこと、人類の歴史はおおむね280ppmの濃度の中で作られたことが説明されました。
 それが、ここ10年ほどに一気に380ppmに上昇しているわけで、これによってIPCCの推計によれば温度が2〜4度の間で上昇することは「ほぼ確からしい」と言われています。
 このIPCCの推計については、会場から疑念も提示されましたが、ほぼ確かである上に、影響が甚大であることを考えると、なんらかの対策はとられるべきだ(どの程度の対策を取るかは議論の余地がある)、という議論の流れになりました。
 影響としては、例えば地盤の弱い中之島では、海面の上昇の影響を受ける可能性があり、つくったばかりの(会場である)なにわ橋駅も数十年で使えなくなることだって考えられる、というような説明がありました。

 また、温暖化に対する対策としては、CO2の排出量は、

 CO2排出量=(CO2発生量/エネルギー消費)×(エネルギー消費/総生産)×(総生産/人口)×人口

 であり(茅の恒等式)、(人口については議論の余地があるが)少なくとも3つのファクターを上手く少し筒減らして行けなければ、効率的な削減は達成できないと述べられました(逆に言えば、ひとつのファクターを20パーセント削減できれば、全体では5割近い削減になるし、不可能でもないが、ひとつのファクターを一気に5割削減するのは大変に難しい)。


Nakanoshima Communication Cafe "the Climate Change and City Planning"
 では、なにをすれば削減になるのかということですが、例えば家庭消費でいえば暖房と温水供給が非常に大きく、冷房を我慢することはCO2削減という観点からはさほど重要ではなく、究極的には住宅断熱を進め、都市をコンパクト化して熱効率を高めることが最大の温暖化対策であるということが述べられました。
 また、太陽温水器や太陽光発電などが、日本は一時世界の最先端を走っていたがいつの間にか欧州に抜かれている現状などが紹介され、継続的な努力の必要性が説明さました。

 また、欧州の都市計画をまねすべきだというわけではないが、と断りつつも、オランダやデンマーク、スウェーデンなどで熱効率に配慮した街づくりが行われている事例が紹介され、一方で大阪のばあいは都市計画という観点に乏しく、緑地なども十分にないため、ヒートアイランドなどが深刻な問題になっているという現状を考えるべきだと論じられました。

 また、会場からも、温暖化がだけ本当に問題なのか、ほかの観点にも目を向けた上で、バランスよく環境に配慮したライフスタイルが必要なのではないかという指摘があり、下田教授からも「研究者の間でも、CO2だけを問題にするのはカロリーだけで食事を選ぶようなものだと話題になる」という話が出されました。

 気候変動は身近であるが、簡単な問題ではないが、大阪という土地柄を反映してか、参加者の皆さんからも日頃気になっていることなどが活発に問題提起され、カフェとしては充実したものになりました。
 

 阪大などが駅でイベントを展開する「中之島コミュニケーションカフェ2008」、始まります。

 http://nakanoshima-cc.net/
 http://cscd.osaka-u.ac.jp/activity/view/230

 科学コミュニケーション関係としては、とりあえず温暖化の話をしますのでよろしくお願いします。



 「中之島コミュニケーションカフェ2008」
 サイエンスカフェ「気候変動とまちづくり―“地球温暖化”は本当に脅威なのか?」

日時 10月23日[木] 18:30−20:30
定員 30名程度(当日先着順)
場所 アートエリアB1 京阪電車中之島線「なにわ橋駅」地下1階コンコース
(地下鉄「淀屋橋駅」「北浜駅」から徒歩約5分)

地球温暖化が大きな問題として注目されていますが、それは本当はどんな問題なのでしょうか? また、都市や家庭で、どんな対策がとれるのでしょうか? 地球の未来について、まずは気軽にお話して見ませんか?

ゲスト 下田吉之(大阪大学教授)
カフェマスター 平川秀幸(大阪大学CSCD准教授)

主催=「中之島コミュニケーションカフェ2008」プロジェクトチーム
   (京阪電気鉄道(株)+大阪大学+NPO法人ダンスボックス)
共催=大阪大学21世紀懐徳堂
企画制作=大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)/NPO法人ダンスボックス
制作協力=NPO recip[地域文化に関する情報とプロジェクト]

ラボカフェお問い合わせ 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)
Tel. 06-6816-9494 (平日 9:00〜17:00) cscd@ns.jim.osaka-u.ac.jp
担当教員:ワーキンググループ 平田(代表)、木ノ下、久保田、花村、清水


 エクアドルでの会議について、以下の通り報告会を行います。



【10/18】貸した金(援助)は返すべき? 〜債務と貧困のつながりを考える:エクアドル・キト会議報告〜

"Week of Global Action Against Debt and IFIs” Banner (Japanese)

(債務と国際金融機関に反対する世界同時行動ウィークの詳細はこちら

スピーカー:
春日 匠(大阪大学コミュニケーション・デザイン・センター特任助教、ATTAC京都)

日時:10月18日(土)18:30〜20:30
場所:(特活)アジア太平洋資料センター2F(地図
主催:(特活)アジア太平洋資料センター(PARC)、ATTACジャパン、聖コロンバン会
参加費: 500円
お問い合わせ:(特活)アジア太平洋資料センター(PARC)普川
TEL:03-5209-3455 FAX:03-5209-3453 E-mail:office●parc-jp.org(●を@にかえてください)


 毎年、かなり大きな額のODA(政府開発援助)が先進国から途上国に出されていますが、貧困や飢餓の問題はほとんど改善の様子を見せていません。

 それどころか、援助の多くは借り入れであるため、その返済は多くの貧しい国々の財政を圧迫しています。債務の返済のために、教育や医療などへの支出が削られ、貧困を悪化させているケースすら珍しくありません。


 こうした構造的な問題を断ち切るために、援助国と被援助国の双方からいくつかの試みが提示されています。

 その中心となるのが「不正な債務」(illegitimate debts)という概念です。独裁者へのポケットにはいった援助、人びとに利益をもたらさなかった失敗プロジェクトなどへの援助、借り手側の利益を優先させた援助などは、そもそも違法や不正・不公正なものであり、返済をせまることはできない、という考え方です。この「不正な債務」について先進国ではノルウェー政府が、また途上国ではエクアドル政府が積極的な提言と調査を進めています。

 市民側でも、ジュビリーサウス(債務問題に取り組む南の国ぐにのNGO・市民組織の連合体)やCADTM(第三世界債務廃絶委員会)など世界各国のNGO・市民団体が集まり、エクアドルの首都キトにおいて債務帳消しをどう求めていくかの戦略会議が開催されました。

 キトでの会議に参加し、そこでの議論を簡単に報告するとともに、なぜ今債務帳消しが求められているのか、そして今後日本からなにができるかについて考えます。

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