アジア初のPCST会議、ソウルにて開催
もうすぐ次の号が出てしまいますが、サイコムジャパンのメルマガに韓国で行われた第9回の科学技術パブリック・コミュニケーション国際会議(PCST-9)の報告を書きました(過去ログはまぐまぐのページで読めます)。
以下に(写真付きで)再掲。
【アジア初のPCST会議、ソウルにて開催】■5月17日から19日の日程で、第9回の科学技術パブリック・コミュニケーション国際会議(PCST-9)が開催された。アジアでは初めての開催となる。
http://www.pcst2006.org/■会議前後はソウルや済州島でワークショップが開かれ、メルマガでも紹介したとおり、来週には日本でも協賛シンポジウムが予定されており、極めて大規模な会議になった。
http://www.britishcouncil.org/jp/japan-science-communication.htm■今回の舞台は韓国のソウルである。それに合わせて、私も初めて韓国を訪れることになった。会議は韓国科学技術アカデミーや科学ファウンデーションのホストにより、ソウルの中心街の巨大な会議場で行われ、開会セレモニーには科学技術大臣が登壇するなど、この分野にかける韓国の意気込みが伝わってくる。
■もちろん、会議では欧米の研究者による発表も行われた。この分野では欧州諸国は日本より10年は先行していると言えるだろうが、基本的には「科学者の求める科学コミュニケーションとジャーナリストの求める科学コミュニケーションのギャップ」や、人々の認識に姿を変えて入り込みつづける欠如モデルの問題など、その根幹の部分では日本での議論とそう変わらない問題が議論されているように見える。
■欧米と日本では、手法の多彩さや予算規模では比較にならない部分が多いが、それでもそういった問題はついて回るのだとすれば、この分野が「理論の発展」だけではどうにもならない部分を含んでいると言うことでもあろう。
■また、韓国やインドなど、急成長を続ける第三世界からの参加者の発表は、基本的に科学の啓蒙普及に大きな期待をかけるものであった。このことは、通常の社会科学系の会合であれば必ず問題になる様な、環境やエネルギーの問題、急速な開発と経済発展のゆがみといった、近年の社会問題に対する参加者の関心は必ずしも高くないことを示している。
■当然のことながら第三世界でも環境などの社会問題について活発な発言を続けているグループや個人は少なくなく、そういった声を反映できないとしたら、PCSTという枠組みの有効性も疑われるといっても過言ではないと思われる。この点は今後の課題であろう。■PCSTは2年ごとの開催である。次回2008年の会議は元々アメリカでの開催が予定されていたが、最終日に「デンマークとスウェーデンの共同開催」になることがアナウンスされた。その次の2010年は国際会議のホスト国として韓国同様、売り出し中であるインドが立候補している。
■次回会場のスウェーデンとデンマークといえば、バルセベック原発問題が思い浮かぶ。スウェーデン側が、デンマークの首都コペンハーゲンからすぐの土地に原発を建設したことから両国の関係が冷え込んだ。1990年代には、バルセベックの付近がかつてはデンマーク領であったことから、当時の大臣が「土地ごと奪い返して廃炉にしてしまえ」などと発言したこともあるぐらい、両国の関係を険悪にしていた。こういった国家間の問題についても、興味深い議論が行われることが期待できると思う。
■この流れで行くとインドの次になる2012年はまた欧米のどこかで行われ、その次、2014年には「そろそろ日本で…」ということになるように思われる。そのころまでに日本の「科学技術コミュニケーション」がそういった体力をつけておけるか、大きな課題である。(春日匠)
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: アジア初のPCST会議、ソウルにて開催
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://talktank.net/mtype/mt-tb.cgi/222
コメントする