テーラーリング・バイオテクノロジー国際会議

 京大にてTailoring Biotechnologies国際会議。
 テーラーリング・バイオテクノロジーのテーラーリングとは勿論、テーラーメイド(注文仕立ての、適合させた)のテーラーである。
 つまり、アンチ・バイオテクノロジーに留まるのではなくて、バイオテクノロジーをどう地域ごとのなニーズ適応させるか積極的に提言していこうという議論で、ワーヘニンゲン大学およびアムステルダム自由大学のGuido Ruivenkampによってつくられた概念と言うことである。

 たしかに(今回の参加者の議論にもあったのだが)環境的には遺伝子組替え農業以上に、現代型の化学肥料を大量に使った農業の問題が大きいというのは事実である。
 だとすれば「反遺伝子組替え作物運動」が化学農法を温存する方向に働きかねない現状は問題で、消費者や農家の人々とも共同で、より環境にも適合的で安全な農法を提言していくことは必須なわけである。

 もちろんこういった議論は、NatureやCellを舞台にしたヘビー級のどつきあいを愛するスーパー科学者には承伏しがたい話だろうが、テーラーメイドのためのテーマで研究できることにやりがいを感じる研究者もそれなりの数いるだろうとも考えられる。
 ただ、現在の社会制度では、そういった研究を評価する制度がないことが問題となる。

 私自身も講演の機会などにケララ州での適合技術の試みについて話をすると、あとで大学院生が質問に来て「必要性があるのはその通りだと思いますが、ボクがそれをやったらアカデミックな競争社会で生き残れませんよね?」と聞かれることが多い。
 実際、まったくそのとおりなのである。
 そういった「ハイテクではないけれど、ローカルに必要性の高い研究」をどう評価して、そういうところでいい仕事をしている若手に報いていくかというのは今後の課題であろう。

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このページは、かすががNovember 3, 2007 9:57 PMに書いたブログ記事です。

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