ラボカフェ「気候変動とまちづくり: 地球温暖化は本当に脅威なのか?」(京阪なにわ橋駅アートエリアB1)ご報告

Nakanoshima Communication Cafe "the Climate Change and City Planning"

 京阪電車中之島線のなにわ橋駅で(だいたい)毎日行われている中之島コミュニケーション・カフェのラボカフェ・プロジェクトですが、昨日はサイエンスカフェでした。
 
 中之島コミュニケーション・カフェは京阪電車がなにわ橋駅に設置したアートエリア B1を利用して行っています。

 今回のサイエンス・カフェは「気候変動とまちづくり: 地球温暖化は本当に脅威なのか?」と題して、大阪大学 大学院工学研究科の下田吉之教授にお話しいただきました。
 進行役は当センターの平川准教授が勤めました。

 これを目当てに来ていただいた方、たまたまアートエリアの壁面の展示に目をとめて入ってみたら始まったので座っていたという方、コミュニケーション・カフェ全体に興味がある常連さん(候補?)など、20人ほどに最後まで席を立つことなく、議論に参加していただきました。



Nakanoshima Communication Cafe "the Climate Change and City Planning"

 話の内容は、(1)地球温暖化とは何か?、(2)地球温暖化に対する対策とは?、(3)温暖化とまちづくり、という三点に渡りました。

 まず、地球はかつて(恐竜の生きていた時代には)二酸化炭素が1000ppmを超える濃度の世界であり、主として植物の働きによって化石燃料の形でそれらが地下に封じ込められたことによって現在の280ppm前後の値に落ち着いたこと、人類の歴史はおおむね280ppmの濃度の中で作られたことが説明されました。
 それが、ここ10年ほどに一気に380ppmに上昇しているわけで、これによってIPCCの推計によれば温度が2〜4度の間で上昇することは「ほぼ確からしい」と言われています。
 このIPCCの推計については、会場から疑念も提示されましたが、ほぼ確かである上に、影響が甚大であることを考えると、なんらかの対策はとられるべきだ(どの程度の対策を取るかは議論の余地がある)、という議論の流れになりました。
 影響としては、例えば地盤の弱い中之島では、海面の上昇の影響を受ける可能性があり、つくったばかりの(会場である)なにわ橋駅も数十年で使えなくなることだって考えられる、というような説明がありました。

 また、温暖化に対する対策としては、CO2の排出量は、

 CO2排出量=(CO2発生量/エネルギー消費)×(エネルギー消費/総生産)×(総生産/人口)×人口

 であり(茅の恒等式)、(人口については議論の余地があるが)少なくとも3つのファクターを上手く少し筒減らして行けなければ、効率的な削減は達成できないと述べられました(逆に言えば、ひとつのファクターを20パーセント削減できれば、全体では5割近い削減になるし、不可能でもないが、ひとつのファクターを一気に5割削減するのは大変に難しい)。


Nakanoshima Communication Cafe "the Climate Change and City Planning"
 では、なにをすれば削減になるのかということですが、例えば家庭消費でいえば暖房と温水供給が非常に大きく、冷房を我慢することはCO2削減という観点からはさほど重要ではなく、究極的には住宅断熱を進め、都市をコンパクト化して熱効率を高めることが最大の温暖化対策であるということが述べられました。
 また、太陽温水器や太陽光発電などが、日本は一時世界の最先端を走っていたがいつの間にか欧州に抜かれている現状などが紹介され、継続的な努力の必要性が説明さました。

 また、欧州の都市計画をまねすべきだというわけではないが、と断りつつも、オランダやデンマーク、スウェーデンなどで熱効率に配慮した街づくりが行われている事例が紹介され、一方で大阪のばあいは都市計画という観点に乏しく、緑地なども十分にないため、ヒートアイランドなどが深刻な問題になっているという現状を考えるべきだと論じられました。

 また、会場からも、温暖化がだけ本当に問題なのか、ほかの観点にも目を向けた上で、バランスよく環境に配慮したライフスタイルが必要なのではないかという指摘があり、下田教授からも「研究者の間でも、CO2だけを問題にするのはカロリーだけで食事を選ぶようなものだと話題になる」という話が出されました。

 気候変動は身近であるが、簡単な問題ではないが、大阪という土地柄を反映してか、参加者の皆さんからも日頃気になっていることなどが活発に問題提起され、カフェとしては充実したものになりました。
 

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このページは、かすががOctober 24, 2008 9:21 PMに書いたブログ記事です。

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