「年越し派遣村」からのソーシャル・キャピタル

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 今年は少しでもブログの更新を多くしようと…と、毎年言ってますが。
 で、メモ的なブログはこちらに書いていこうと思っています。

 しかし、年末からガザだの「年越し派遣村」だの、言葉を失うような問題が続きます。
 オバマ大統領登場などは、多少なりと明るいニュースになってくれればいいのですが…。
 派遣の問題については、報道や政治家の反応を見ていると、問題の本質を把握し損ねているのではないかという気がしなくもありません。
 例えば、菅直人氏が「2兆円あれば、100万人の失業者に月17万円ずつ1年間支給しても賄える」と発言(Yahoo News 1月4日18時13分配信 時事通信)とか…。
 これに対して、まともに働いてもそんなにもらえないのに、というような反発が2ちゃんねるなどで散見されて、それ自体は短絡的な批判と言えるかもしれませんが、そういう反発が出るのも故なきことではない部分もあるでしょう。

 基本的には、
1)派遣の問題は、月収の問題と言うより、(派遣村の主催者のひとりでもある)湯浅誠氏が「ため」と呼ぶような、個々人をサポートする社会関係であったりするわけです。 
 例えば、ネットカフェでひと月暮らせば最低でも5〜6万にはなるわけで、一方安アパートを探せば3万ぐらいでも入れるところは出てくるわけです。しかし、保証人になってくれる人がいないので、こういったアパートを探せなかったりするわけです。ここで「保証人になってくれる親や知り合い」を湯浅氏は「ため」と呼んでいるわけです。もちろん、アマルティア・センであれば「権原(Entitlement)」の問題として論じるでしょう。

2)また、そういった安アパート自体も年々減っている。これは矢部史郎氏らが早くから指摘していることですね。例えば、銭湯があって、風呂なしトイレ共同のアパートがあるような(いしいひさいちのマンガに出てきそうな)街は、貧乏人や外国人労働者といった人々にとって過ごしやすい街であるはずですが、そういった街がだんだんと少なくなってきていることも問題でしょう。

3)これに対処するのに菅氏の冒頭の台詞にあるような、バラマキ的発想は、対処療法としてはともかく、本質的ではないし、福祉を「リソースの奪い合い」として見てしまうような(2ちゃんねらー的?、あるいは日本的)視点を納得させるものではないでしょう。

4)たぶん最も重要なことは(家族や社会そのものが疲弊している今)「ため」を供給するようなソーシャル・キャピタル/社会関係資本を構築することです。
 単純に財源バラマキだと、「誰がより多く取るか」という競争のような側面が否定しきれませんが、NPOの活性化や若者コミュニティの形成といった「ソーシャル・キャピタル」の涵養は、そこで形成されたソーシャル・キャピタルがコモンズ的性格を持つという点において、直接的に「救済される」人だけではなく、社会全体の利益になっていくのだということを、多くの人に納得して貰う努力が必要です。
 たぶん、オランダのスクウォッティングなんかはそういった理念に基づいているのですし、日本だと松本哉氏の「素人の乱」なんてのもそういう発想でしょうか。

5)ただ、ソーシャル・キャピタルを利用するには、一定の「コミュニケーション・スキル」みたいなものが要求されるのも事実でしょう。「コミュニケーション・スキル」については、いかにも勝ち組な人たちが「お勉強できるだけじゃサクセスはないのよ」みたいな言い方で取り上げられることが多いので、非常に胡散臭いものになってしまっている気がしますが、もっと生活に根ざした部分のコミュニケーション・スキルが求められるのではないか、と…。
 大学教員として、ささやかながら努力できるところがあるとすればそれかなぁ、と思う一方で、そういうのはもっと『ハマータウンの野郎ども』的なプロセスでしか取得されないのではないかと思ったり…。
 (日本の戦後教育の最大の問題は『ハマータウンの野郎ども』的なものを破壊したことにあると言っても過言ではないと思うのですが、そういうことについて議論をしている教育論は、殆どないような…)

        

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このページは、かすがが2009年1月 5日 03:16に書いたブログ記事です。

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